むくげの木
今日は奥さんも飲み会だし娘も不在なので、庭で「ひとり焼肉」。ニオイも残らないし油も飛ばないから庭でやるのが一番。
夜風に吹かれて肉を焼きながら、ここ数日、白い花が咲き乱れてる、奥さん自慢の木槿(むくげ)の木を眺めていたら、突然25年前の記憶が蘇ってきた。
「あーそうだ!あれは木槿(むくげ)だったんだ!」
大学の同期のT。卒業してから、お互い夜が遅い仕事に就いた。28歳ぐらいの時だったか、たまたまボクが引っ越して家が近くになったもんだから、夜中1時とか2時とか、仕事が片付いてから「飲み行くか」と彼から電話がかかってきて飲みに行くことが度々あった。
ある時、ちょうど今頃の季節だったんじゃないだろうか。12時過ぎにいつものように電話がかかってきて「どうよ、仕事終わった?」「青山にいいとこあるから行かないか」という。
深夜、男2人で青山まで向かった。青山墓地のすぐ横にある店で、ワニ肉の唐揚げとか不思議なメニューがあった気がする。オープンエアの席に座ると、隣は墓地なのにリゾート地に来たような雰囲気だった。今夜のように微妙に涼しい風が吹いていたのも一因だったかもしれない。
彼はフローズンマルガリータだか、フローズンモヒートを何杯も飲んでた気がする。ボクも同じものを頼んで、かなり酔っ払った。タルタルソースの添えられた、少し硬い鶏肉のような「ワニ肉」の唐揚げをつまみながら、お互いの仕事の話をした。学生時代はあんなにだらしなかったけど、今はイッチョマエにちゃんと仕事してるんだぜ、と言いたい時期だった。
でもボクの話はたいしたことなくて、彼の話の方が何倍も面白かった。最近行ったという欧州出張の話をずっと聞いた。
「え、ヘレスってどこなの?スペイン?ポルトガル?」
「スペイン。イベリア半島を伊豆半島だとすると、松崎か雲見あたりだな。」
「あーwww」
(↑ヘレスではなくてエストリルだったかも)
そうだ、Tからあの話を聞いたレストランの、通りと席を隔てる目隠しのように植っていた木は木槿だったんだ!
どうでもいい記憶って、ある時突然蘇ってくるもの。うちの庭の木槿の木を見てそんなことを思い出すとは思ってもみなかった。
まあ、この6月は彼の十三回忌でもあったから、「どうよ、仕事終わった?」という彼からのメッセージだったのかもしれない。
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