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テーブルの向こう側を見て

「2人の食卓」
Table For Twoを日本語にすると、このように訳せます。これには先進国の人と途上国の子どもが同じ食卓について食事をする、そういう意味が込められています。

TFTUAが他のボランティア団体と大きく異なる点は何でしょうか。それは普段の活動からでは自分たちが価値を与えるターゲットの顔が見えないことです。

ほかの団体では例えばカンボジアで学校を建てたり、ラオスの学校で日本語を教えたり、フィリピンの孤児院で子どもと遊んだりと実際に現地を訪れてターゲットの顔をみながら活動します。実際にターゲットの顔を見て活動することで、自分が相手に価値を与えている実感が湧いて満足感をもたらし、モチベーションの向上につながることでしょう。


ところがTFTUAは学食でTFTメニューを導入したり、地域の食堂と連携したりと国内の活動が中心で、実際に途上国の学校で給食を食べる子どもたちを見られる機会は普段の活動ではありません。

それゆえ誰のために活動しているのか実感が湧かず、ただメニューを考えて提供するだけのマンネリになりがちです。これはメンバーのモチベーション低下の要因の一つでもあると思います。


そんなTFTUAで唯一公式に現地を見ることができるのが、年に一度のスタディーツアーです。恥ずかしながら昨年はこのスタツアの存在を知らず、コアになってから初めてその存在を知りました。今年は関東コアとして参加しないという選択肢はほぼなかったので、ここでは統括を務めようと思った理由を書きます。


理由は単純でUAイベントの中でも最も大きいイベントを作りたかったからです。唯一の海外渡航イベントであるスタツアは、当時の自分にとって間違いなく一番のビッグイベントに思えました(もちろん他のイベントも同じくらい重要ですが!)。

また、国際協力の道を志す者として、単に現地に訪問してターゲットに会うよりも自ら企画して行った方が得るものが大きいと考えたことも理由の1つです。

そんなこんなで統括になって参加者を募集し、定員ぴったりの25人でスタツアを開催しました。(最初全然集まらずにひやひや)


ホームステイ先について

今年のステイ先はすべてTFTの受給者で、基本的に男女別2人組でのホームステイでした。男子は5人しかいなかったので、2人と3人にわかれました。僕がホームステイしたのはそのうち3人の方です。

僕らのステイ先は、ホストマザーが日本語ペラペラ(!?) というかなり特殊な家庭でした。20年以上日本で暮らしていたそうで、そこで日本語も覚えて日本人の旦那さんと結婚しましたが現在は離婚してフィリピンに帰ってきたようです。日本のこともかなり詳しく(多少世代の差は感じましたが笑)、スポーツや芸能から政治と幅広くいろいろな話ができました。

TFTの支援を受けているのはエリカという4年生の女の子です。シャイな子であまり話せませんでしたが、一緒にたくさん遊びました。学年でトップの成績らしくホストマザーが嬉しそうに話してくれました。給食支援を受けることと学力の間に必ずしも相関があるわけではないようです。


ほかにもホストマザーの弟さんやその息子?も一緒に暮らしていました。弟さんはホストマザーの影響で日本語の単語を少し知っていて、初めて会ったときに飼っている犬(犬2匹と猫1匹がいました。めちゃなついてくれてかわいかった) を指さして笑顔で「ネコ?」と聞かれました笑。

また。近所には親戚もたくさん住んでおり、僕らと同年代くらいのいとこたちが毎晩来てくれてエリカも一緒にみんなで遊びました。


家は4か月前に引っ越したばかりと言っていましたが、かなりぼろぼろに感じました。ドアが壊れていてただドア板を置いているだけだし、トイレはもちろん自分で水を汲んで流すタイプ。水道も通っていません。何より衝撃だったのは、シャワーが家の外にあること。道路を挟んだ向かい側に山の水が出るポンプ式の井戸があり、その場で水を汲んで体を洗いました。もちろん道路から丸見えなので、下着は着けたままですが笑。屋外シャワーは人生初でしたが、意外とすぐに慣れて普通に水浴びしていました笑。


受給者の家庭ということで比較的貧しい家庭なのかなと思っていましたが、一方で大きいトラックや自家用トライシクル、バイクも2台ほど持っていたり、家の外の部屋ではパソコンがたくさんあって有料でオンラインゲームを貸していたりとむしろ裕福なのでは?と感じました。TFTを受給しているのもごはんが食べられないというよりも、むしろ本人の体質的な部分が関係しているのかな。

現地で学んだこと

統括という立場だったこともあり、事前に昨年の参加者等からいろいろ話を聞いていてイメージだけ先行している部分がありましたが、いい意味でそれを裏切られたように思います。


例えば菜園に関して。昨年はほとんど機能していなかった(台風の影響もあって?)と聞いていました。今年案内してもらうと、敷地内のあちこちのスペースを利用して作物を栽培しており、とても充実していました。特に今年の6月にTFTの支援で購入したというネットハウスは、担当の先生がとても嬉しそうに紹介してくれました。ネットをすることで、乾季の強い日差し・雨期の激しい雨から作物を守ることができるそう。


他にも土が逃げないようにタイヤを使用したプランターや、虫よけの草、卵の殻を利用して育てている苗(そのまま殻ごと植えると殻のカルシウムが栄養になるそうです)など、いろいろな工夫が見られました。夢は学校で育てた野菜で給食を作ること。無事に収穫できることを祈ります。


昨年から変化した点として、屋内だけでなく外でも給食を食べるようになったことです。それまでは暗い屋内で受給者だけで集まって食べていたらしいのですが、あまり会話もなく一人で食べている子も多かったそう。そこで、屋外でも食べるようにしたところ、受給者でない友達が食べ終わるのを待ってくれて雰囲気がよくなる、明るい場所で食べられることで給食の楽しさ・魅力がより引き出せるようになりました。実際に子どもに質問をしても、外で食べる方が好きと答えていました。


僕は、給食はただおなかを満たすだけではなく他の子と一緒に食べてコミュニケーションをとったり、食の大切さを知ったりすることに魅力があると考えているので、外で食べるようになったことで、子供たちにより給食の魅力を知ってもらえればと思います。


また、アクションの浩平さんが言っていたように、この給食支援の本当の意味が分かるのは10年後、子どもたちが大きくなってからです。今給食支援を受けて学校に通っている子どもたちが、大きくなってどのような大人になるのかとても楽しみに感じます。


最後に現地で印象に残っていることを2つほど。

まず、2日目に菜園を見せてもらっている途中でキンダー(日本でいう年長さん)の授業を少し見学することができました。そこでは道徳のような授業をしていて家族の大切さ等を教えていました。その中で、生きていく上で大切な物について話していたのがとても印象に残っています。全部で4つあり、1つ目は「服」、2つ目は「食」、3つ目は「家」、ここまでは日本の衣・食・住と同じです。

そして4つ目は「薬」でした。日本にいる僕らからすると薬が生活に必須のものという感覚がなかったのでとても以外でした。けっきょくその後それについて深く聞くことはできませんでしたが、フィリピンでは薬が衣食住と同じくらい重要だということに日本との大きな違いを感じました。 


もう1つはダンスです。3日目の夕方にホストファミリーとズンバ(フィリピンのダンス)に連れて行ってもらいました。バスケコートの広場に地元の人たちが30人くらい集まり曲に合わせて踊っていて、毎週金曜日にやっているらしいです。他のステイ先の人も何組か来ていて、みんな最初は戸惑って様子を見ていましたが、そのうち恐る恐る?踊り始めました。僕も普段ダンスは踊らないしむしろ苦手意識がありましたが、踊っていると楽しくなって、けっきょく疲れているのにずっと踊っていました。


後で、なんでこんなに楽しかったのか考えたら、日本だとだれかに見せたりするために踊ることが多くて踊りの優劣をみられることが多いけど、こっちだとただ純粋にダンスそのものを楽しんでいて、そのみんなで一緒になって踊る一体感がいいのかなぁという結論に至りました笑。ほんとに楽しいので、フィリピンに行ったらぜひスンバ踊ってみてください。現地の人たちの距離も近くなること間違いなしです。


一方で課題もいくつか見えました。

まず、園芸学部の人曰く、菜園の作物の植える感覚が狭かったり葉っぱを虫に食われていたりするのが気になったそうで、そういうところの農業に関する知識不足が見られました。


また、給食支援の対象者の選定方法も課題だと感じました。現状ではBMIを指標として“痩せ気味”・“痩せ”の子どもを支援対象にしています。しかし、身長と体重から求めるだけのBMIでは本人の体質的に太りにくい人だとしっかり食べていても支給者に選ばれてしまいます。BMIの他にももっといい指標がないかなと思いつつもあったら使っているわけで、、、難しい課題です。。


なかでも一番の課題は、学校に通えない子どもが一定数いることです。ホストマザーに学校に通えない子どもはいるのか質問した際、それなりにいるとの答えが返ってきました。理由としては、家が学校から遠くて山道を歩いていけない、トライシクルに乗って通うお金もない等が理由だそう。それを答えた後にホストマザーが「それでも親は子どもを学校に行かせないといけない。教育を受けさせないといけない。どんなに苦しくたってぜったいに何とかなるから」と強く語っていたのがとても印象に残っています。


学校に通っている子どもには給食支援をすることができますが、一番支援を必要としているであろう学校に通うことすらできない子どもたちに支援の手が行き届かないことが、とてもとてももどかしく感じました。

参加できなかった人に伝えたいこと

持って行ってよかった物などはきっと他の参加者の人が書いてくれていると思うので、ここでは一番伝えたいことだけを書きます。


それは、どんなにスタツアに行った人から話を聞こうともそれは実際に自分の目で現地を見ることには及ばない、ということです。こんな風に報告書を参加者みんなに書いてもらって少しでも現地の様子を伝えようとはしていますが、やっぱりそれは他者のフィルターを通して見た現地の姿です。本当の、真の現地の姿は実際に自分がその場に行って五感で感じないとわかりません。そのことが僕は今回のスタツアでよくわかりました。


なので、今回スタツアに参加できなかったという人は、是非来年のスタツアに参加してください。そしてそこで感じたことをまた次の代に伝えていってください。

それがスタツア2019統括代表としてのお願いです。


さいごに

今回のスタツアを開催するにあたり、たくさんの助けをいただきました。

経験に基づいてたくさんのアドバイスをくださった昨年度の統括・参加者の皆さん。フィリピン特別コーディネーター(?)のまっちゃん。ツアー内容を実際に企画して現地でのコーディネートもしてくださったNPO法人アクションの方々。この場を借りて感謝申し上げます。

また、勇気を出して応募フォームの送信ボタンを押してくれた参加者の皆さん、みんながいたから最高のスタツアになりました。いろいろと至らない統括でごめんなさい。

そして一緒にこのツアーを作り上げた統括メンバー、最高でしたありがとう。


このツアーに関わったすべての人に

Salamat po!!

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