ギャルゲーの好感度教えてくれるアイツ

 あんなやつになりたいな、と思ったことがあった。主人公なんてガラじゃないから、どこか別のところでちょっとでも役に立てる存在になりたかった。なくてもまあなんとかなるっちゃなるけど、あったらプレイヤーが助かる、パワポケ界のラブスコープのように。

ラブスコープとは:パワポケのサクセスモードに持ち込めるアイテムのこと。ヒロインの好感度を見られるようになる(本来は見えない)。僕はアルバム埋めの時にお世話になった。

 でも、大学生になってから、いやアイツにはなりたくないな、と思うようになった。冷静に考えてみれば、好感度を教えてくれるアイツはヒロインの主人公への好感度を知っているのである。これは、好感度を教えてくれるアイツがヒロインと交流を持っているか、あるいは洞察力がぶっ壊れていることを意味している。

 まずは後者について。例えば僕の洞察力は、誰が誰のことを好きとか嫌いとか、この2人は交際してそうだとか、この人はこの人に依存してそうだとか。あるいは、あの人笑ってるけど機嫌悪そうだとか、そういうのがなんとなく分かるレベルだ。自分でいうのも何だが、人並みかそれ以上には分かるんじゃないかと思っている。しかし、好感度を教えてくれるアイツは主人公への好感度を数値化、もしくは程度化出来るのである。見るだけで「あ、あの子は主人公のことこれくらい好きだな」というのが分かるのだ。これはとんでもなく恐ろしい観察眼である。そこまでの観察力、洞察力を僕は一生身につけることが出来ないだろう。第一、そんな観察力があっても人間の嫌なところばかり目に入るに決まっている。

 次は前者についてなのだが、これは僕が好感度を教えてくれるアイツになることを諦めた理由だ。そもそも僕は比較的軽度ではあるものの女性恐怖症であり、女性と冷静にコミュニケーションを取るのが非常に困難である。ゆえに、そもそも好感度を教えてくれるアイツになることは出来ないのは当然といえる。また、仮に僕が女性恐怖症を患っておらず、またコミュニケーションを簡単に取ることが出来るコミュ強者だとする(すごい仮定だ)。好感度を教えてくれるアイツは大抵主人公の友人や親友であるから、ヒロイン達もそこまで邪険にはしないだろう。しかしそうすると今度は別の問題が生じる。ヒロインから「主人公は誰のことが好きなのか」という質問が降りかかる可能性と、「自分を推薦しろ」という脅迫である。ギャルゲーには大抵ヒロインが複数人いるが(といっても僕は殆どギャルゲーをやったことがないのだが)、その複数人から同じことを聞かれたり自分を主人公の前でそれとなく上げろという命令が来るのである。なんという地獄だろう。僕はギャルゲーの好感度を教えてくれるアイツでなかったことを心の底から感謝した。


 現在、僕は人間関係で胃を痛める生活が続いている。昼ドラもびっくりの泥沼と化しているのである。本来傍観者である僕は、主要人物全てと交流を持っていることもあり板挟みにあっている。ああ、好感度を教えてくれるアイツももしかしたら心のなかではこんな気分なのかもなあ、とビオフェルミンを飲みながら静かに考えた。頭痛の薬も飲んだほうがいいよ、とどこからともなく声が聞こえた気がする。ありがとう、今度バファリン買ってくる。

 ああいうお助けキャラは画面上ではなんともないようにプレイヤーを助けてくれるが、きっとその裏には涙ぐましい努力やとてつもない心労を抱えていることは自明といってもいい。プレイヤーのために、快適にプレイ出来るようにと情報を整理したり倉庫に道具を詰めたり好感度を教えてくれたりする彼らのことを考えれば、もしかするとちょっとしか不具合やバグだって「しょうがないな」と許せるようになるのではないだろうか。


 そんなことないか。不具合は不具合だし。とっとと修正しろ以外ないだろう。僕にだけ毎秒ヒヒイロカネよこせ。


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