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蝶ケ岳から徳澤に戻ってきたらオランダ人カップルと再会した

山に登ると素晴らしい景色を見られるだけでなく、時に思わぬ人との出会いにも恵まれる。今年はコロナ禍もあって雪山から縁遠くなってしまったけど、今回は上高地の奥での春山の話です。
尚、私ハッサンのアイコンに使用している写真は、この旅で撮った蝶ケ岳から見た穂高連峰の雪景色です。
<まぶしい穂高連峰の雪景色>

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登山メモ

日程: 2019年GW
ルート: 徳澤→蝶ケ岳(標高2677m)→徳澤(片道4,5時間)
宿泊:   徳澤園、蝶ケ岳ヒュッテ

蝶ケ岳ルートは片道4,5時間

2日とも晴れていたのに稜線に出ると夕方も翌朝も雷鳥の家族を見られたのは幸い。白い冬毛がそこそこ残っていた。彼らはトコトコと鈍そうに歩く。飛べない鳥かと思っていたら、スーッと飛んできて私の近くに降り立ってくれたのがまた嬉しかった。
<雷鳥>

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さて、前年(2018)のGWは前泊の徳澤園で迎えた朝に雪が降っていて参った。でも2019年は快晴に恵まれてラクに上がれる。と言っても、相手は蝶ケ岳なので長い登り坂だ。登山道の8~9割は雪に覆われていた。なのでアイゼンは必須。高度を上げるにつれて、クマザサが雪に隠れていき、でも樹の周囲だけ木の温度で雪が溶けていくのかポッカリ穴が空いていた。
<徐々に高度を上げていく(標高2000~2200m前後)>

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夏だと長塀山の看板が確かにあったのだが、雪で埋もれて見当たらず。もう印象も朧げだったしそろそろ4時間歩いた事もあって、そこを通り過ぎてから下りの登山者に「長塀山ってどこ?」と聞いてしまったくらいだ。
山頂では穂高も槍ケ岳も常念岳も綺麗に見える。
手前には蝶槍もある。そう、前年8月に常念岳から縦走してここに辿り着いた時にはガスで何も見えなかった。だからこそ、余計にこの綺麗な景色がありがたかった。西風が強いので稜線に出ると、雪が吹き飛ばされて西側には殆ど残ってなくて、あるのは東側ばかり。八ヶ岳と同じだ。
<蝶槍の向こうに常念岳>

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蝶ケ岳ヒュッテは夏よりもかなり混んでいた。GWの中でもとりわけpeak日に当たっていたためだろう。夕食も3回に分かれていた。ここのゴハンは柔らかくて好みなのだ。
部屋は雑魚寝。枕は3つで、掛布団と毛布は2つ。それを三重県から来られたご夫婦と3人で上手く融通して眠る。あれこれ話したがかなり長距離を登り倒してきたtoughなご夫婦だった。三重県の伊賀方面は関西弁なのかと初めて知った。ただ、大部屋で寝ていた他の客から「眠っているのにウルサイ」と叱られてしまい、小さくなって部屋から退散した。
同じルートを登って下った。登りは淡々と行けるのだけど、下りは苦手。一体何人に追い越されていったのか、自分でも悲しくなる。何度か休憩しながら、目印になりそうな徳澤園の赤い屋根を探す。途中で梓川がかすかに見えるのだが、なかなか出てこない。「徳澤まであと1km」って看板も悩ましい。そこから1時間くらい降りていく羽目になるし、他の登山者も「あの看板は明らかにおかしい」と笑っていた。

オランダ人カップルは何と4連泊していた

GWの蝶ケ岳登山の前後はゼイタクして徳澤園に泊まった。
で前泊の日に、なんと若い外国人が2人泊まっていた。翌朝、彼・彼女が長塀山・蝶ケ岳への登山口からザック無し、ストックもアイゼンも無しで登っていたのに出くわす。軽く挨拶して、彼らがオランダから来たのだと知った。彼らは若いし体格的にもtoughなのでドンドン登っていくものの、30分くらい戻ってくる。残雪がたっぷり残っている山道なので流石に無理だと諦めて、徳澤に降りていった。
で私はと言えば、なんとか登り切って、蝶ケ岳ヒュッテに一泊する事ができた。そして、翌朝また来た道をそのまま徳澤に降りていったのだ。
<おそらく夏場なら妖精の池が見えるはず>

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徳澤園にもう1泊したら、なんと夕食の時にまた彼らに再会した。しかも、6人掛けテーブルが10~15ほど並んでいるその同じテーブルだった。折角なので、少し会話してみた。といっても英語がスラスラと出てくる訳でもない。なので、ドキドキしながらカタコトで話しながら、山頂で撮った穂高の山並みとか雷鳥の写真をスマホで見せた。
聞いてみると、2人は1ケ月の予定で初めての訪日旅行だとか。流石、ヨーロッパの人達は堂々とバカンスを取るものだ。日本人だと10連休でも身の処し方に困って休日出勤したくなっちゃった人がいただろうけど、彼らは違う。以前も、NZのエイベルタスマン国立公園(南島)でボートホテルに泊まっていた時に、日本人旅行の短さを笑われた後でオランダとかベルギーの旅人が「私達は1ケ月の休みなんだ」、「えっそれだけ? 私は2ケ月もあるよ」と自慢し始めていたし、彼我のgapを感じてしまった事がある。
彼らは京都から上高地にやってきて山小屋らしからぬリッチな徳澤園になんと4泊するとか。その前日も涸沢まで登るのは無理だったみたいだが、横尾を越えて本谷橋の辺りまで歩いたとか。まあそこまでならば、登るって言うよりflatな道を歩く感じで進めるのだ。ただ、この時期でも本谷橋が雪で埋まっていたと聞いてビックリ。私も前年のGWに初めて涸沢まで登っているので感覚は判る。
で、上高地でゆっくりとrelaxした後は、東京、秋田、北海道へ北上していくと言う。初めての日本で東京と北海道は容易に想像が付くのだけど、オランダ人にとって秋田って何を期待しているのか。なまはげ? それとも小安峡などどこかの秘湯なのか?
会社を辞めてから折角ダミー名刺を作ってあったので、渡そうとして探したのだが財布に1枚も入っていない。失態だった。ただ、それに気づいた向こうから名刺を差し出されて助かった。で、その名刺に驚く。1ケ月の旅行専用の挨拶文を日英併記した名刺だったのだ。いつもは会社員としての名刺を配っていただけだったけど、これも1つのコミュニケーションの方法なのかと感心した。オモテ面には日本語と英語でこう書かれていた。
「はじめまして。私たちはオランダから来ました。そして私たちは初めて日本を旅行しています」
<名刺のオモテ面> ※名前やアドレスをprotectしています。

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「すいません、私たちはあまり上手な日本語を話せません。敬具」ウラ面にも、日本人の心をくすぐるような文面が書かれていた。こう書かれると不思議なもので、日本人としてインバウンドのお客様に親切に接しなきゃあ、と思ってしまう。
前年の徳澤園ではブログを始めるきっかけをくれた人と出会えたし、2019年もまたこの小屋でいい出会いがあって良かった。

徳澤園に連泊すると、またも美味しいディナー

徳澤園に戻ってくるとホッとする。ここは山小屋ならぬ広々とした造りだし、風呂に入れるし、暖炉の傍でマンガを読めるし、食事も美味しい。
前年、連泊してみて夕食メニューが違うのを知った。昨年は定番のステーキに代わってビーフシチューが出てきたのだ。今年も期待したが、なんとローストビープっぽい肉が少々、これが最高に美味しかった! 他にもサーモン刺身、海鮮マリネ、山菜てんぷら(行者ニンニク・太いタラの芽・こしあぶら等)、豚肉のすまし汁などとにかく豪華だった。
<もしかしてローストビーフ>

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カブの漬物まで美味しくて、一緒に食事した福岡のご夫婦もこれにはビックリしていた。ついつい呑み慣れないワインまで頼んでしまう。
隣りの席は蝶ケ岳まで日帰りでピストンしてきた兄ちゃんだった。体力あるなあ。私が日帰り山行したら、あまりの長さにきっと下山道でへたり込んでいたんじゃないか。
で、その向こうに座っていたオランダ人カップルの食卓はヤケに貧相だった。3連泊の日だったし飽きてきたのかと思っていたら、なんとスキヤキ! が運ばれてきた。初めての来日だけどスキヤキを器用に箸を使って食べていた。そっか、ここに3連泊するとスキヤキを食べられるのかと、ついこっちまで妙に高揚した気分になった。彼らは4連泊と言っていたし、明日はどんな牛肉料理を楽しむのか、自分が食べられる訳でもないのに妄想してしまった。
このオランダ人に英語で簡単な文章を添えた写真をメールで案内したら、数日後に返信が届いていた。もう函館に着いたとの事。蝶ケ岳山頂の雰囲気が伝わったようで良かった。

徳澤から上高地バスターミナルまで戻っていく

さて、ここ最近のブログで徳澤~蝶ケ岳ルートを紹介してきたが、バスが徳澤まで通っている訳ではない。上高地バスターミナルから徳澤まで6.6kmを2時間ほど歩く。もう何度も歩いた道だ。ここを歩かない事には涸沢にも蝶ケ岳にも辿り着けないのだ。今年は花を見つけられなかった。唯一、立った形の赤いモノが出掛かっていた。時期的にみてザゼンソウの子供なのか。
GWにほぼ同じ日程で歩いても花は違う。2018年は河童橋~徳澤間に咲き誇っていたニリンソウが、2019年には全くなかった。本谷橋の少し先に一輪だけ咲いていたショウジョウバカマも、今年は見つけられず。
<2018.GWの上高地にて>

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サルは5~10頭くらい見掛けた。真冬に上高地に来ると、猿は平然と私の前に座り込んでいつまでも木の実かなにかをかじっていたけど、流石にこの季節はニンゲンが多いのでスタスタと林の中に隠れていく。
<2015.1の上高地にて>

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