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【夏ピリカ応募】スイーツ探偵:振り回される助手

「私ったら若返っちゃってる!」

「意味がわかりません」

ワタシはスイーツ探偵の助手Cだ。

3か月前、助手として採用された。
一人で始めた探偵業が当たり、
人手が足りなくなったのだ。

正規を雇うほど余裕はないとのことで、
アルバイトだが、学生の身分としては十分だ。

ただ、この先生、
急に突拍子もないことを言いだす。

「今、鏡を見たら目の下の小ジワがないのよ」
「?」
「あなたを採用した時は目の下シワシワしていたの」
「ああ、シワシワというよりカラカラ」
「んん!とにかくあったのよ。小ジワ。それが今ツヤツヤと」
「脂ぎって?」
「んんー!水分の含まれたツヤツヤ!」
「はあ…」

この意味不明な会話さえなければ。
持ち込まれる事件は難しくないし、
事務作業も大したものでなく気に入っている。

いったい、先生はなにを言いたいのだ。
というか今日は暇すぎる。
だから先生が急に鏡に興味を持ちだすのだ。

「家の鏡と外の鏡って顔の映りが違うらしいわ。家の鏡には自分の理想が込められてちょっと良く映るんですって。本当の姿じゃないって聞いたことがあるの」

人差し指を頬に当て、
トントンと軽くリズムをとる。
でた!先生のシンキングタイム!

「助手君、真相を確かめましょう!出かけるわよ!」

さっとUVカットの帽子を頭にのせ、
玄関へと向かう。

「先生!待ってください!出かけるのは生協の配達が来てからです!」


「ここのケーキって美味しいわね♪」
「先生は本当に美味しそうに食べますね」
「当然でしょ。美味しいものに素直になれなくてどうするの」

まあ、そうですけれども。
しかしよく食べるなぁと、
コーヒーを飲みながら感心していると、

「さあ、謎解きですよ!」
と先生が勢いよく立ち上がった!
私もつられて立ち上がる。

「謎が解けたんですね!ではさっそく!」
「へ?」
「え?」
「バカ!トイレくらいひとりで行かせて!」

なんだぁ。トイレか。
先生…言葉と行動がチグハグ…

ため息をつきつつ待っていると、
先生がウキウキと帰ってきた。

「謎は解けましたよ、助手君」
「解けた?」

「今、トイレで鏡をじっくり見たんだけど、小ジワがなかったの♪ここは初めて入ったスイーツ店だから、私の念は鏡に込められていない」

「はあ」
「だ・か・ら。私やっぱり若返ったのよぉ~♪」

「ワタシも謎が解けました」
「はい?」
「先生、本日のスイーツ、何回目ですか?」
「1回目ですけど?」
「朝、チーズケーキを食されてましたよね?」
「あ、あれは朝食です!」
「私の採用時、羊羹を食しながら面接をされてましたよね?」
「あ、あれはあなたの緊張をほぐそうと!」
「この前、私が用事を済ませて帰ってきたらカスタードクリーム入り焼き菓子の4個目を慌てて口に押し込んでいましたよね?」
「あ、あれは分けるには個数が足りなくて!」
「先生、小ジワを盗んだ張本人は言い訳癖です」

体重計に乗ってみると、先生の体重は7kg増えていた…

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「ペコちゃんのほっぺ事件」のコメント欄から生まれたスイーツ探偵を主人公にして、夏ピリカ応募作としました。
よろしくお願いします!

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