【#シロクマ文芸部3月】③いりいり菜の花
1カ月の全お題を使って一つの物語を作るチャレンジをしています。レギュラー部員は月初めにお題を全部教えてもらえるので思いつきました。
1回目はこちら👇
2回目はこちら👇
朧月夜に見る菜の花畑はとても美しかったようで、お風呂中も風呂上がりにハーブティーを飲んでいる間もこびとはずっと喋りっぱなしでした。
「と〜っても、とっても綺麗だった!」
朧月の中で見た風景が余程美しかったのでしょう。鼻をズズっとしながらうっとりしています。
「一緒に行けたらなあ」とこびとが言うので「場所どこ?次の休みに行こうよ」と提案してみました。
「あ……」
突然こびとの動きが止まります。不思議に思い口を開きかけると
「忘れちゃった……」
と、悲しそうな声が。痒い目玉と鼻水を我慢しながら帰ってきたせいで、菜の花畑の場所を忘れてしまったようです。
こびとの目から大粒の涙がポロリ。可哀想で見ていられなくなり黙って立ち上がりました。
ちょうどご飯時だったので、そのまま台所の方へ向かいます。
「ご飯だよ」
「あ!菜の花!」
こびとの目はまんまる。冷蔵庫に鶏そぼろがあったので炒り卵を作り、ご飯の上にのせて出してみたのです。
「お茶碗の中が菜の花畑だ!」
「鶏そぼろの土手と炒り卵の菜の花だよ」
「いりいり菜の花きれいだね!」
大粒の涙はどこへやらニコニコとご飯を食べるこびと。いつか本当の菜の花畑を朧月夜の下で見ようね。
勝手にシロクマ文芸部チャレンジ、楽しいです。
小牧幸助部長、今週もありがとうございました。
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