【#シロクマ文芸部5月】③コツコツがいいの
1カ月の全お題を使って一つの物語を作るチャレンジをしています。レギュラー部員は月初めにお題を全部教えてもらえるので思いつきました。今日はその3回目。
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②はこちら👇
「白い靴を履きたい!」
お出かけの支度も終わり、さあ出かけようというところでルウが騒ぎます。
「履いているじゃない」
ルウはおろしたての白い靴を履いていたのです。
「違うのよ!ママの白い靴が履きたいの!」
「え?パンプス?」
今日はパパと外で待ち合わせをして夕食をいただきます。ママとルウはお揃いのワンピースを着ました。
「双子コーデね」
とママに言われて大人になったような気分のルウでしたが、玄関にある靴を見てその気持ちが一気にしぼみました。
ルウの靴が布製だったのです。普段ならお気に入りの靴なのですが、ママの白いパンプスと比べるとそれはとても子どもっぽく見えるような気がします。
「ママみたいなツルッとしたコツコツいう靴がいいぃ」
「この靴はルウの足には大きすぎるし硬いのよ」
最初はルウをなだめていたママでしたが、段々と面倒になってきました。
「そんなに言うのなら外食やめようかなぁ」
「や……やだぁ!」
ルウは泣きだしました。泣いていると全てがルウに意地悪をしているような気になり涙が後から後から出てきます。
「泣くのをやめなさい」
「だ、だって、と、止まら、ないん、だ、もん」
ヒックヒックするルウに手を焼いたママはスマホをトントンし始めました。
ママは泣いている私よりスマホが好きなんだ。そう思いルウは悲しくなりました。
う、うわ~ん
「あ、可愛い」
泣いていることにお構いなしのママはスマホの画面を急にルウに見せました。むうっとしたルウが画面を見ると、そこには大きなウサギのぬいぐるみが。
「ヒッ……か、可愛い……うわ~ん」
「ルウ、足を見てごらん」
「?」
ウサギはルウが履こうとしていた白い靴と同じデザインのものを履いています。バックルのリボンまでそっくりです。
「パパが内緒で買ったのよ」
ホントは内緒でお店でプレゼントする予定だったんだけどなぁ、サプライズ失敗だあ、お店にも行けそうにないしぃ、とママがスマホをプラプラさせながら変な踊りをし始めました。ルウへのサプライズが失敗したと悲しそうな顔をしています。
「ル、ルウはなにも見なかった!サイプラズは楽しみだけどルウ、知らないよ!お揃いのウサちゃんも知らない!早くお店に行こう!」
泣いていたことが嘘のようにルウは玄関へ走ります。早く早くと言うルウに苦笑いするママなのでした。
「早く来てくれないかなぁ……」
ルウの駄々で30分遅れます、とママからLINEがあったのでパパはひとりレストランで大きなウサギと席についていたのでした。店に入る人は必ず男性と大きなウサギが座る席をチラっと見て通り過ぎます。
「恥ずかしいよ……」
今日は文学フリマ東京38です!
楽しみだなぁ。
小牧幸助部長、今週もありがとうございました。
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