フレッシュ魔法おじさん AROUND☆FYFTY!!――12

 業務を終え、慰めのつもりでケーキを買って帰った後。
 節奈は既に自室に籠もり、帳を落としていた後であった。

「夕飯もまだだっていうのに……」
「あなたのゼリーかっぱらっていったから大丈夫じゃないかしら」
「俺の?」
「あなたの」
「そうかぁ……」

 ちゃんと食べる元気があったことに安堵すべきか、ちゃんと名前を書いておいたのにと落胆するべきか。
 とっておきのいちごゼリーという尊い犠牲に涙しながら、文雄はできたてのオムライスにありついていた。
 冷えた内臓にオムレツの熱が心地よく染み渡る……が、不安はしこりのように残り、心の何処かを冷やしていた。

「風呂にはちゃんと入ってたかい?」
「びしょ濡れだったから、ちゃんと入らせたわよ……何でそんなことを?」
「ンンッ……あれだよ、男の勘だよ」
「虫の知らせの方がまだ聞こえがいいわね」

 章江の率直な物言いに苦笑しながらも、文雄は誤魔化せたことをそっと安堵する。
 失意に項垂れ、雨に濡れるままの節奈を見たと正直に言えば、章江は「何故一緒に帰ってやらなかった」と叱るに決まっているからだ。
 文雄もそうしたかったのは山々だが、その時美少女だったなどとは口が裂けても言えない。
 なので秘するが吉。沈黙は金なりである。

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