春、とてもやわらかくて、（時に激しく)揺れたり揺さぶったりする、そんな季節らしいと、なんだか初めて、行きつ戻りつしながら近づいて来るのを直視できていたようなこの春がすっかり冬と入れ替わったのを確認しながら。一緒にやわらかくなって揺られていれば、これまでみたいに怪我はしないらしい。

(これもまた、海のないこの平原の街に)期間限定で現れる海なのかもしれない、と、乾いた風に揺れる一面の緑の下を歩きながら。

薄曇りの朝。淡い灰色の空の下、どこから光を、受け取っているのだろう。一斉に噴き出した木の葉の黄緑だけがバス通りの歩道沿いに柔らかな輝きを放っている。(定時のバス。)