南凪子

batons writing college 1期生です

南凪子

batons writing college 1期生です

マガジン

  • かく、つなぐ、めぐる。

    • 32本

    『かく、つなぐ、めぐる。』はライター・古賀史健さんが開講したbatons writing college (バトンズの学校)の1期生有志によるマガジンです。「書くこと」を通じて出会った仲間たちと、これからもつながっていける場をつくりたい。そして、古賀さんから受け取った大切なバトンを胸に、この先もみんなで書き続けたい。そんな思いから、私たちはこのマガジンを立ち上げました。毎月、2つのキーワードをもとに、11人の"走者"たちがバトンをつなぎます。記事の更新は3日に1度。書き手それぞれの個性的なエッセイをお楽しみください。

最近の記事

ハイドパークで日常を思う #かくつなぐめぐる

 鳥たちの動きに合わせて水面が揺れる。遠くの水面は光を反射して、光っているのと同じくらい眩しい。だだっ広い水の上には大中小の水鳥たちが浮かんで、それぞれの声で鳴いている。カメラを向ける観光客の群れを宇宙人でも見るかのように眺めていてもいいくらいなのに、彼らは何も気にせず過ごしているように見える。 白くて大きなハクチョウ、次いで大きくてたくさんいるハイイロガン、中型犬サイズの鋭いまなざしを持ったカモメと、日本でもよく見るサイズの可愛らしいカモメ。カモも2種類。ハトもいる。杭の

    • ぷしゅ #かくつなぐめぐる

      プシュッ 後ろの席からプルタブを起こす音が聞こえて、缶から空気がとび抜ける音が後に続いた。新大阪駅へ向かう新幹線の車窓からは台風明けの明るい空が見える。 何の変哲もない平日の16時過ぎだが、スーツを着た大人と、子連れの家族でほとんどの座席が埋まっていた。 8月の半ばだし、子どもたちは夏休みだろうか。隣の席で汗をかきながらぐっすり眠る小学生くらいの男の子を盗み見ると、今日が終わるその充足感や、ほどよい疲労感が伝わってきた。 車内全体にそんな雰囲気が漂っているような。 な

      • ポムポムプリンのスリッパ #かくつなぐめぐる

         2020年春から2年間、自分の家がなかった。それまで1人暮らしをしていた部屋を引き払う手続きをした矢先に新型感染症が流行り始め、新天地と決めていたドイツへの渡航を取りやめた。ニュース速報は絶え間なく不安を煽る。もうじきこの部屋を出ていくのに、やろうとしていたことも白紙になった。急に未来が不安になった。ベランダから取り込んだばかりのTシャツを握りしめて、「一緒に、住んでもいい?」とかつての同居人に電話をかけた時のことを今でも思い出せる。 そうして、先の見えない混乱に流される

      ハイドパークで日常を思う #かくつなぐめぐる

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      • かく、つなぐ、めぐる。
        32本