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変人好き女のバレンタインデー唯一の思い出

学生の頃大好きだった男の子がいた。頭はすごく良かったが有名な変人だった。私は変人の男が大好物だ。クラスの私以外の女の子達は彼が嫌いだと言っていた。もしかすると私以外にも彼に好意を持つ女子もいたかもしれないが誰も口には出してなかった。

バレンタインデーの日が近づいたある日クラスのリーダー的女子が「くじ引きでバレンタインデーにチョコレートをあげる男子を決めよう!」と提案した。皆それに賛成しくじを引いた。私が引いたくじが誰だったか覚えていない。放課後ひとりの女子が教室で泣いており2人の女友達が慰めていた。尋ねてみたら泣いている女子は私が好きな変人男子のくじを引いたらしい。私は微笑みながら「私のくじと交換してあげようか?」と提案した。彼女は涙を浮かべながら「いいの?いいの?」と何回も申し訳なさそうに感謝した。

バレンタインデー当日私は少しドキドキしながら午後彼にチョコレートを渡した。彼は表情はあまり変えずに「ありがとう」と言ってチョコレートをもらってくれた。

55年生きてきて覚えているバレンタインデーの思い出はほぼそれだけだ。彼は相変わらず変人の道を突き進んでいるだろうか?きっと突き進んでいると私は確信している。

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