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地獄の六甲山で別れなかった奇跡

結婚前、今は夫になった彼と車で神戸へ出かけた。当時の車はグレーのラングレーだった。中古で買ったらしい。30年経った今もそうだがその日も車中では浜田省吾の歌がかかっていた。忘れてしまったが日中は神戸の街を歩いたり食事をしたりしたんだろう。夕方になり彼が車で六甲山に登るか?と言ってきた。当時の従順だった私はうなずいた。

六甲山を登り始めたが物凄い渋滞だった。六甲山頂から見える美しい夜景の人気が原因だろう。急な坂道をノロノロと登っているうちに車がおかしくなってきた。だんだんと2人の会話は無くなり、更に車は悲鳴をあげ始めた。この急な渋滞の坂道で車が動かなくなったら?と思うと恐怖しかなかった。当時は彼に優しかった私は勇気を出して六甲山の山頂へ行くのは諦めて帰る?と提案した。彼は暗い顔のままうなずいた。帰りの急な下り坂を降りる時も車がさらに大きな悲鳴をあげ我々は恐怖で無言のままだった。

いまだに六甲山頂に行ったことはないし、山頂から美しい夜景を見たことはない。六甲山を思い浮かべるとあの地獄のドライブを思い出す。あの時彼に幻滅し別れていたら違う男性と結婚していたのだろう。人生は不思議だ。


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