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海水浴と父の思い出

小学生の頃夏になると海水浴のバス遠足があった。田舎で暮らす小学生にとって海水浴は1年に一度の楽しみな行事だった。

何故か海水浴遠足は父の思い出が多い。他の学校行事は母の思い出ばかりなのに…今夜ふと母が泳げないことを思い出した。だから海水浴には泳げる父が必ず一緒にいたのか!と今頃気づいた。

ある年の海水浴の日、台風が近づいていた。波が荒い海で泳いでいたら、突然大波が襲ってきた。海の中でもがきながら恐怖を感じていた時、父の力強い手が私の足首を掴んで引き上げてくれた。父は自分の眼鏡が波にさらわれたと笑っていた。

またある年の海水浴の日、私は微熱を出した。母から見学だけなら行ってもよいと言われ父とバスに乗った。しょんぼりしている私に「お母さんに内緒で泳いでいいぞ」と父が言ってくれた。私は意外な父の言葉に歓喜した。もちろん、帰宅後ビショビショの水着を見た母には私が泳いだことはすぐにバレた。きっと母も呆れながら笑っていたと思う。

父とはよく衝突することも多かった。不真面目な私は父の望むような生き方は出来なかった。しかし父は死ぬまでずっと私を愛してくれた。父は私に強さと明るさを与えてくれた。もうすぐ父の一周忌だ。家族や親族と集まって父の思い出話をするのが楽しみだ。


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