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家族

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#祖父

祖父とマッチの火を初めてつけた日

祖父とマッチの火を初めてつけた日

私が8歳の頃だった。ある日、祖父が煙草を吸おうとした。いつもなら自分でマッチの火を煙草につける祖父だった。しかしその日は近くにいた私に「典子煙草に火をつけてくれ」と言った。当時ライターがあったどうか覚えていないが、祖父が私に渡したのはマッチ箱だった。私はまだマッチの火をつけたことが無かった。恐る恐る「マッチの火つけたことない」と答えた。祖父は厳しい顔をして「つけたことが無い⁈」と言った。そして私は

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大掃除と祖父の思い出

大掃除と祖父の思い出

年末の大掃除が近づくと思い出す情景がある。着物を着た祖父の姿だ。祖父はきれい好きで、よく箒(ほうき)で掃き掃除をしていた。私が庭を箒で掃いていると「それでは駄目だ」といつも箒を取り上げられた。どこが駄目なのかよく分からないまま、祖父が庭を掃いている姿をじっと見ていた。

客間と呼ばれる祖父が大切にしていた部屋があった。祖父から客間を雑巾がけするように頼まれた。雑巾を絞り畳を拭いた。以前祖父に畳の目

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祖父の思い出と後悔

祖父の思い出と後悔

小学6年生の頃、家の庭でバーベキューをした時の家族の音声が残っている。祖父母の元気な声も録音されている。家族7人で賑やかに楽しく肉や野菜を焼きながら食べている様子が音声から伝わってくる。過去の音声は兄が全てCDに保存してくれている。

大人になりそのバーベキューの音声を何回か聴いたことがある。家族の誰にも言っていないが一箇所だけ胸が痛くなる会話がある。祖父が私達に何かして欲しそうに喋りかけるが、私

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祖父の思い出

祖父の思い出

祖父はお洒落だった。白の鳥打ち帽、白いスーツ、白い靴に身を固め、ステッキを持ちお出かけしていた。
いつも綺麗好きでほうきを持って畳を掃いている姿が印象深い。家では着物姿で背筋をピンと伸ばし正座して筆で文字を書いていた。

そんなに喋るイメージはなかったが友達は多かったし、近所の人や知り合いは困った時、祖父を頼って家に来た。一度夫婦げんかをした二人が夜遅く我が家に来て祖父が二人に言い聞かせていた記憶

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