アナログのススメ


 

アナログな事を日々大切にしています。手を汚し、汗をかき、頭を使い、全身でものづくりをする事が、自分の肌に合っています。
パソコン一台でSNSから近況報告や意見交換、情報収集、何でもできる時代ですが、私は大切な報告は会った時にしたいし、考えがある時は面と向かって言いたいし、情報は自分の足で歩き目で見て体験したいと考えます。
ネットで集めた情報は、誰かの脳の中であり、誰かの目で見た物であり、今はそれらが溢れすぎていて、見ていると知ったような気になってしまい、膨大な情報の網目の中で自分自身の考えや目線を見失う事も多くあります。絵や彫刻は、それらを痛烈に露呈させます。誰かが撮った写真資料から描いた絵や彫刻は、決して作家本人が自分の目で見て描いたものには敵わないのです。いいデッサンをするには、とにかく見て描くの繰り返し、それしかなく、誰も自分の目や手や脳を、入れ替わってはくれないので、自分で鍛錬するしかないのです。私は一匹の野良猫を彫刻にする時、いつも必ずその子をスケッチに行くところから始めます。その子と同じ空間で、同じ空気を吸い、同じ過酷な屋外の気温で、その猫を追いかけまわしてスケッチし、木を彫ります。その経験をしたのは、世界で私一人という事になるので、世界で私だけにしか発見できない美を、見つける事ができます。しかしネットで動画を見て作ったとしたら、その同じ動画を見た人数分、自分と同じ体験をした人がいるので、多数の人が発見した美を描く事になります。アナログな行為には、すべて、自分にしかできない事が、たくさん含まれているのです。


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