こどもたち画伯へ伝えたい10のこと
こどもたち画伯へ
ひとつ
絵を描くということは、うまく描くために描くのではなくて、よく世界を見るために、よく感じ、よく学ぶために、そしてそのことを、だれかに伝えるために、描くのだよ。見る人のことを思って、描くのもいいよ。世界と君とをつなぐ、窓なんだよ。
ふたつ
描いた絵を見せるということは、窓をひらくこととにているよ。鍵がかかってしまっていると、みんなには絵がよく見えないから、まずは「ようこそ!」と、窓をひらくように描くのがいいよ。君の世界へ、たいせつなひとたちを招待するきもちで、描くといいよ。
みっつ
見えたまま描いたらいいよ、うそをつかなくても、大丈夫。君の見えているもの、美しいと思うものを、信じて描くんだよ。見て感じたままに、描いたらいいよ。ただし、絵の世界では、ひとやものを傷つけるのはやめよう。絵はいつも、見る人のこころをあたためるために、あるのだから。
よっつ
いつもあたらしいきもちで、描くといいよ。今まで描いてきたどのやりかたも、今描きたいものには、使えない。だって、描いている時間も、光も、空間も、君も、ひとつとして全く同じではないのだから。あたらしい描きかた、あたらしい気持ちで、わくわくと、描くといいよ。
いつつ
どんなものでも、描いてみるといいよ。きらいだとおもっていたものの中にも、うつくしさがあったりするし、描くのが苦手だと思っていたもののなかに、いい絵をめざすヒントがかくされているよ。たいせつなのは、どんなものでも一度、描いてみることだ、描いてみてから、やっぱりよく描けなかったとしたら、今のじぶんには、そのもののよさが、わかってあげられなかっただけだよ。
むっつ
みえないものも、いっしょに描くんだよ、見えるものの奥に、目にはみえないうつくしさがあるよ。見るだけじゃなく、音や、においや、おんど、てざわり、感じたものを、すべてまるごと、描くんだよ。たのしさ、かなしさ、いかり、あいじょう、きもちをいっしょに描くことが、とてもたいせつ。
ななつ
君が絵を描くとき、世界をじっと見るとき、君は夜空にまたたく星とおなじ、世界とつながっているんだよ、一枚の絵の中では、なんにでもなれるし、どこへだって行ける。自由に、思いのまま旅をして、べつのひとやものになってみてもいいよ、いつもとちがった目線で、世界を見るための時間なのだから。
やっつ
絵を描いていてとてもかなしいことや、くるしいこと、つらくて逃げだしたいようなとき、絵になみだがこぼれるときもあるよ、くるしいことのまわりを、まずはよく見つめてみよう。もしかしたらつらいぶぶんを一度おいておいて、ほかのぶぶんをがんばっていれば、くるしいことがなくなっていることがあるよ、ひろいひろい目で、深呼吸して、世界をみわたしてみよう。
ここのつ
まるごとを描いたら、ひとつの部分をみつめて描く、ひとつの部分を描いたら、まるごとをみなおして描く。このくりかえしで、絵はふかく、うつくしく、大きくなっていくよ。朝がきて、夜がまたくるように、春がきて、冬がまたくるように、小さい目、大きい目をくりかえしてくりかえして、絵は成長していくんだよ
とう
じぶんにしか見つけてあげられないうつくしいものやかたちが、きっとあるよ。君は世界で、だれもみたことのないうつくしいものの、発見者になるんだ、そしてそのことを、絵で伝える配達人なんだ。だれのもとに届いても、君が自信をもってじぶんのみつけたうつくしいものを伝えられるように、ほこれるように、いい絵をかこう。
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