ふじののはなし .4

ふじのにはひとつだけ、致命的且つどうしようもない欠点があった。
布の上でおしっこをするのが大好きなのだ。

これは想像以上に困ったことだった。
私がいる時は、私に怒られるのをわかっているので我慢する。
しかし、私がいなくなると、こっそりと忍ぶように、ベッドやソファ、カーペット、放置していた服、ありとあらゆる布に粗相をする。
独特の匂いがするので、したことはわかるのだが、どこにしたのか探すのがまず一苦労。
だいたいはベッドやカーペットなど、洗ったり処置するのが本当に大変な場所なので見つけた後は絶望、どんなに疲れて帰ってきても洗い終わるまで眠ることはできない。
次第に私の部屋からベッド以外の布製のものは全て消え、捨てた布たちは数えきれない。

ストレスがある時や、トイレが気に入らない場合にそういう行動になることがあると聞いたので、私は長い期間で何度もトイレを変え、一緒にいるよう努力をしたり、私が考えられる全てのことを試した。
しかし根本は変わらなかった。
私の長年の闘いの結論は、布でするのが本当に好きなんだな、に戻った。

稀に、どうしても我慢できなくなったのか、満を持して私の目の前で粗相を始める時があった。
当然私は烈火の如く怒り、粗相の前に座らせてガミガミと説教をするのだが、布にしている時のふじのの顔は、ものすごく幸せそうに、うっとりとしていた。
それから、ごくたまにだが、この布はもう捨ててもいいかな…と思うものにしている時は、終わるのを待っていたこともあった。
それくらい幸せそうだった。
だが、良いことだと思われると困るので、終わった後は鬼のように怒るし、ふじのもすぐにごめんなさいしてきた。

そういう故で、うちにはふじのの専用部屋が必要だった。

ふじのは、粗相をした後は必ず自分のベッドに引きこもり、決して目を合わさず、私が粗相に気付くまで存在を潜めて勝手に反省する癖があった。
近年ではその仕草で「なんかしたんだな」と気付くことが多かったので逆効果なのだが、彼はとても正直者だった。
「落ち込むんなら最初からしなきゃいいじゃん」と言うと、ふじのは、気まずそうに目を逸らした。

適当につづきます

この記事が参加している募集

#猫のいるしあわせ

21,780件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?