ふじののはなし .2

ふじのが家に来て間もなく、私は風邪をこじらせて肺炎になった。
せっかく猫と仲良くなろうという期間だったのに、こともあろうに、猫は咳をするもの=敵と判別をするらしい。
当時、私の部屋が兼用でふじのの部屋だったので、ふじのは約5日間くらい、咳をし続ける敵と同じ部屋で過ごす羽目になってしまった。
物陰に隠れてミーミーと鳴くその姿は、かわいそうと同時に必死すぎて可愛く、笑えてきた。

私はふじののことを、最初の頃こそはペットとして飼い可愛がる、という気持ちで育てていた。
しかし時が経ち、私とふじのが1人と1匹暮らしになり、一緒に生活をしていく上で、そんな気持ちは薄らいでいった。
猫が私を支えてくれているのだ。

私の家の環境は家族がそれぞれ好きなことをしていて、私にとってそれはとても寂しいものだった。
ふじのがいてもそれはそれは寂しかったので、ふじのがいなかったらと思うと、冗談ではなく、悲惨なことになっていたと確信できる。

ふじのがいたから私は一緒に住むための家賃とふじののごはん代、いざという時の病院代などのために仕事を頑張った。
ご存知のことと思うが、猫が飼える物件というのは非常に物件数が少なく、家賃は群を抜いて高い。
さらにふじのは、理由は後述するが、専用の部屋を用意し、お高い療養食を買ってあげる必要があった。
毎月の諸経費が引き落とされるたびに、ふじのを前にして「本当に感謝してほしい」という内容の愚痴と説教をした。
ふじのはうーん、という顔をして聞いていた。

しかし私はある日、猫の時給とはいくらなのか?と考えた。
ふじのの視点になり考えてみると、私は好きな時にでかけ、好きな時に帰ってくる。
帰ってきたら好きな時に構われて、好きな時に放置される。
疲れている時は機嫌が悪く、調子が良い時はやたら構ってくる。
いつ帰ってくるかはわからない。もしかしたら帰ってこないかも…という不安と闘っている。

そう考えると、猫の一日は大半が待機時間、それを含めてかなりの重労働であることがわかる。
そうなるとふじのの稼ぎはもしかしたらかなりの対価を得られることになるのではないだろうか。

それから、私はふじのを正式に飼い猫ではなくパートナーと思うようになった。
私はふじのに言った。
「寂しいと思うけど、一緒に暮らすために仕事してくるから我慢してね」
ふじのはうーん、という顔をして聞いていた。

適当につづきます

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