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秋田で考える、小規模多機能型アートセンターのこれから

ここ数ヶ月ばたばたでお会いした方や一部の方にしかお知らせできていないのですが、6月からNPO法人アーツセンターあきたのディレクターとして、2021年3月に開館する秋田市文化創造館の立ち上げなどに携わっています。

地域に根ざしたアートセンターと運営チームの立ち上げ

アーツセンターあきたは、秋田公立美術大学が、大学と地域の社会連携を担ってきた社会貢献センターをNPO化した組織。これにより、地域の企業や自治体からの要請に様々なかたちで応えられるようになり、アート・デザインを活かした多様な事業を推進・コーディネートしています。

常に大小いくつかのアートプロジェクトを推進していたり、相談からはじまる事業が多かったり、ある程度の情報提供や人材の紹介に応じている現状を見ると、助成事業を行っているわけではありませんが、秋田における広義の「地域アーツカウンシル」的な存在になりつつあると感じています。

このチームが今後、秋田市文化創造館という、旧秋田県立美術館を活用したリアルなアートセンターの運営を担っていくことになります。橋本の主なミッションは、実際の事業も施設の中だけにはとどまらないであろうアートセンターの価値をかたちにしながら、その運営を担うチーム体制の強化に寄与すること。

価値が定まった派手なイベントを多くしかけていくというよりは、市民が担い手になるものも含めて、いくつかのアートプロジェクトをじっくりと併走させていきながら、未知の可能性を創造していくー。そんなあり方になるのではないかなと考えています。

ソフト・ハード共に短期間で準備が進んでいるため、非常にやりがいがある(困難が多い)仕事であることは間違い無いのですが、東京アートポイント計画立ち上げなどこれまでの経験を生かせそうであること、以下のようなことを考えている、ここ数年の自分の興味にはドンピシャの内容であることから、思い切って飛び込んでみた次第です。

大型芸術祭・アートプロジェクトから小中規模のアートセンター・インスティチューションの時代へ

私がこれまで多く携わってきた、芸術祭・アートプロジェクトといった領域の事業は、東京オリパラに合わせて多くの文化プログラムが行われる予定だった2020年をピークとして淘汰され、特に公的資金を用いるものについては間違いなく市場が縮小していくだろうと予想していました。ここにコロナの問題が追い討ちをかけているのが現状だと思います。

公共事業としての芸術祭・アートプロジェクトは、乱暴に言えば建物を必須としないのですぐに事業化がすることができ、またすぐにやめることもできます。時世や政策の変化、財政の悪化の影響を受けやすいのです。

一方で、芸術祭・アートプロジェクトが文化・芸術的価値だけでなく、複雑化する課題に向き合わなければいけない現代において、ある程度の社会的な価値を生み出す可能性についても明らかになってきた。

そうなると、つぶせない公共施設としての機能を有する建物を運営しながら、その地域に根ざした芸術祭・アートプロジェクト的なことも手がけていくー。言い方を変えると、予算を担保してくれる建物を運営しながら、多様化するミッションに対応できるチームだけが生き残っていくー。建築分野でも時代は小規模多機能型になりつつあり、そんな近い将来を描いていました。

美術館でありながらアートプロジェクトへ積極的に取り組むアーツ前橋。社会教育施設でもあるせんだいメディアテーク。文化観光施設である八戸ポータルミュージアム はっちあたりが施設としては参考例になりそうです。

地域に根ざしたNPO等がこのような施設を運営する未来も、なかなか面白そうだと思いませんか。例えば名古屋の港まちづくり協議会、京都のHAPS、大分のBEPPU PROJECT。あるいは各地に生まれつつある地域アーツカウンシル。

秋田でNPOがアートセンターを運営するというモデルを形にすることは、これからの時代の、地域に根ざしたアートセンターやインスティチューションのあり方を考えるにあたって、希望になると確信しています。

 東京拠点の仕事や活動をどのようにまわすのか

5月に体制変更のお知らせをしている、一般社団法人ノマドプロダクションでの職務・活動は継続します。体制変更はそもそも、組織としての成長ではなく、プラットフォーム的な広がりを目指しつつ、仕事はそれぞれでという設立時に考えていたあり方に立ち返って予定していたものでしたので、大きな抵抗はありませんでした。

誤算だったのは、コロナの問題が収束せず、当初考えていたよりも秋田との気軽な行き来が難しい状況が続いていること。コロナの影響により、5月におさまる予定だった仕事がのびていたり、担当者ベースでほぼまわるだろうと考えていた仕事の変更対応などに追われる状況が続いているといったところでしょうか。

関係各位にはご迷惑をおかけすることもあるかとは思いますが、引き続きよろしくお願いいたします。TOKYO MIDTOWN AWARDやヨコハマ・パラトリエンナーレのプロジェクトチーム、バックオフィスを支えてくれているHさんには特に感謝しています。そして岡山や大分にすごく行きにくくなってしまうのが特に、辛いなぁ、と思っています。

なお郵送でのご案内や印刷物の送付については、引き続き東京の事務所宛で問題ありませんが、時期が迫っているご案内や、アーツセンターあきたで回覧・配架させていただけそうなものにつきましては、秋田にもお送りいただければ幸いです。

秋田市文化創造館
〒010-0875 秋田県秋田市千秋明徳町3-16
tel: 018-893-5656
※2021年3月〜基本、こちらにおります

NPO法人アーツセンターあきた
〒010-1632 秋田市新屋大川町12-3 アトリエももさだ内
tel: 018-888-813
※NPO本部、秋田公立美術大学内です

一般社団法人ノマドプロダクション
〒112-0003 東京都文京区春日2-14-9 SPICE 2F
tel: 070-3337-9370

ミイラとりがミイラに?

最後に余談ですが、経緯というか経過について少しだけ。2月頃からアーツセンターあきたをはじめ、各地の求人情報をSNSで必死にシェアしていた時期があるのですが、その頃は秋田の仕事をするというイメージをほとんど持っていませんでした。秋田と、同じく内情をある程度知っていて特に応援したいと思っていた大分にいい人材を送り込み、楽しく遊びや取材に行くというのが目論見だったのです(汗。

繁忙期で考える時間がなかったということもありますが、2020年度に想定していた仕事の空きリソースでは、やりたくてもできない。

それが、微妙に状況が変わったり、コロナの影が頭をもたげはじめたり、既存の仕事をうまくまわしてくれそうな方が見つかったり、いろんな要素が絡みあって、今の状況があります。

もちろん、NPOの事業であったアウト・オブ・民藝や、個人的に関わっていた遠藤薫のプロジェクトがきっかけで、1月に秋田を訪問していたことも大前提でした。NPOの代表である藤浩志さんだけでなく、スタッフにもTokyo Art Research Labの元受講生など知り合いが数人いたので、既存の事業の最新の状況や課題については、見聞きしていたのです。

そんなわけで、「あれっ?」と思った方は、誤解のなきようにお願いします。なんだかんだで、完全な勤め人経験はのべ4年しかないフリーランス生活を重ねてきましたので、自由に生きています(笑。

秋田は海の文化、温泉、発酵、伝統芸能などなど気になるキーワードがたくさん。まずは身近なお店の開拓からはじめています。ぜひ遊びにきてくださいね。

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