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ずーっと、追いかけて

一日1note…何とか続いてはいるが、今日は出張先の大阪で、大仕事を終え内省にふける夜、思いつくままに書いてみる。


入社して2年目。力もないのに全国放送のキャスターという役割を任され、その影響力の大きさに対する、自分の力不足に、来る日も来る日も落ち込んでいた日々。「アナウンサーなんて、やっぱり私には向いていないんだ」と、何のプラスにもならなければ、言い訳とも言い難い呟きを繰り返しながら、私は、書店でアナウンサー達が書いた本を読み漁った。そんな時に出合ったのが、山根基世さんの「であいの旅」というエッセイだった。

「であいの旅」を書かれた当時、山根さんは40歳。NHKアナウンサーとして、不動の地位を築いているのにも関わらず…本に登場する姿は、失敗と反省だらけ。それでも、権力や同調圧力に屈することなく立ち向かう強さを持ち、一方で市井の人たちと真摯に向き合う温かさも同居していて、「ああ、私はこんなアナウンサーになりたい」と素直に思った。

そんな「であいの日」から30年以上の月日を経て、今日の仕事は、山根基世さんとの対談であった。ビビりの私が、ビビらないはずはなく(笑)、ここのところずーっと「うろうろ」と落ち着かなかったのは、この日の準備をしていたからだ。

「好き」な気持ちは、時にとても厄介である。「恋は盲目」とはよく言ったもので、好きすぎると途端に視野が狭くなる。私の場合はとりわけ、感受性が強すぎて、好きがこぼれだすと泣き出す危険性もある。
しかし、今回の仕事は、会場のお客様だけでなく、後日配信用に録画もある。「大好き」という熱だけで突っ走ったら、大変なことになる。「感情」と「論理」のバランス調整が必須だ。
何とか心を落ち着け、いつものように全体構成を考え、進行台本に落とし込み、ご本人にもお伝えした。それでもやっぱり、好きな気持ちに準備が追い付いていない気がして、新大阪までの道のりも、我が家ライブラリから取り出した、とりわけ大好きな山根さんの本2冊を読みながら会場に向かう。

事前の簡単な打ち合わせ、場当たり、簡易リハーサル、そして本番。

自分なりには精一杯だったと思う。でも、正直に言えば、山根さんの「ことば」を、もっと確かに、来場者の皆さんに聴いてもらえたんじゃないかと思う。それが叶わなかったのは、ひとえに、自分の力不足だ。語彙の乏しさ、受け止める幅の限界、そして何より、自分の「枠」にこだわってしまって、100%楽しめなかったこと・・・

大阪でひとり、不甲斐なさと悔しさに向き合いながら、これが、30年以上追いかけてきた師匠が、落ちこぼれの弟子に与えてくれた成長のチャンスなのかもしれないと思う。まだまだ、なのである。

対談の中で、山根さんは「本当の言葉っていうのは、困難に向き合いながら、それでも逃げずに、考えて、内省して、探していくしかなくて、そうして心に積み重なった言葉はいつしか、身体から自然に出てくるようになる」と話していた。

いま、私が感じている苦さこそが、本当のことばになる。

そう信じて、また明日から、一歩でも、憧れの大好きな師匠に近づくべく努力し続けるしかない。登壇を終えて軽やかに「明日は仙台、土曜日は舞台なのよ」と足取り軽やかに会場を後にする75歳の大好きな人!

ずーっと追いかけさせてくださいね。

タイトルの写真は「東京会場」での2ショットです📷






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