少年野球の監督から見たネットスーパー事業
はじめに
初めまして、2023年3月に10Xに入社した橋原です。前職は、株式会社MonotaROという資材通販会社で、専務執行役として主にマーケティングの仕事をしていました。10Xに入社後は、パートナー企業のネットスーパー事業の成長支援を行っています。
アドベントカレンダーに「野球の話を書かないか」とricchaさんに誘われ、おいそれとOK出したところ、「じゃ、トリよろしく」と返され、空気を読んで野球の話は封印するべきか、はたまた、あいつは空気読めないやつブランディングをしておくべきか、悩んだ末、野球の話から始めます。
私はプライベートで少年野球の監督をしていて、週末はグランドで汗を流しています。監督を初めて3年目で、お世辞でも強いとは言えないチームですが、勝てば嬉しい、負ければ悔しいという、貴重な体験をしています。息子が卒業するタイミングで、このポジションを引き継ぐべきか、日々悩みは深いです。
少年野球という地域コミュニティと、ネットスーパーという地域経済は、ネットワークの成立という概念を用いて説明すると、共通しているところがあるので、本エントリーで紹介したいと思います。(少年野球とネットスーパーを同じ目で見ている変態は、世の中に自分だけではないかと)
ネットワークの成立要件
ネットワーク効果
まずこの2つの話をする前に、ネットワーク効果という言葉を紹介します。これは、製品やサービスの価値がその利用者の数に比例して増大する現象を指しています。アンドリュー・チェンの著書「ネットワーク・エフェクト」では、ネットワークの成り立ちについて深く掘り下げています。
彼は、ネットワークが自律し、独自の価値を生み出すのに必要な最小限のネットワークを「アトミックネットワーク」と呼び、アトミックネットワークが成立・自己維持できるようになるには、ある閾値を満たす必要性を説いています。これは、一定のノード数(参加者や利用者の数)を満たさないと、ネットワークは安定せず、その価値を十分に発揮できないという主張です。
生物学でも提唱される閾値
この閾値の概念は、生物社会学でも認識されていて、「アリー効果の閾値」と呼ばれています。例えば、捕食者から身を守るために群れを形成したり、繁殖機会を確保したりという効用が、一定の個体数を下回ると発揮されなくなり、集団を維持できなくなる現象を指します。このように、ネットワークが成立するためには、越えなければならないノード数の閾値があり、デジタルサービスや社会性生物などにおける共通の概念として存在しています。
少年野球という地域コミュニティ
チームという最小単位のネットワーク
この閾値の概念を、少年野球の世界に適用してみます。少年野球のアトミックネットワーク、つまり、その基本的な単位は「チーム」です。小学生は年齢による体力差が大きため、選手の数とチームの強さが比例します。選手自身も、自分と同じレベルの選手が周囲にいることで、練習の効率や、レギュラーになるためのモチベーションなど、チームから強い影響を受けています。つまり、お互いの存在が効用を生み出す状態であると言えます。
チームが成り立つために必要な人数
しかし、少子化などの影響で選手の数が減少し、チームの人数が一定を下回ると、活気や魅力が急速に失われ、統廃合に進むケースは多いです。少年野球における「アリー効果の閾値」は、(地域差があると思いますが)大体20人(学年あたり3.3人)と考えています。
現状、少年野球の競技人口は少子化の進行以上に減少していますが、これは閾値を下回るチームが増加し、受け皿となるチームが減少するという悪循環を起こしているのではないかと思います。「少年野球の監督」と聞くと、多くの人は采配を振る人というイメージが強いかもしれません。しかし、チームの存続を考え、選手数を維持することが最も重要な課題となっています。
ネットスーパーという地域経済
ネットスーパーの経済性の確立
そろそろ仕事の話をしたいと思いますが、ネットスーパーにおけるアトミックネットワークは「店舗」と「お客様」で形成されています。従来は、来店しか手段がなかったところに、配達という新たなネットワークを作り、成立させることが我々の仕事です。
私は生鮮食品のEC化が進むという仮説に賭けて、10Xにジョインしています。そのために避けて通れないのが、各店舗が個別に経済性を確立することです。端的に言えば、損益分岐点という閾値を超える売上と作ることですが、店舗毎に異なる事情や制約がある中で、実現は容易くありません。
高いリピート率が、事業成長を支える
一方で、ネットスーパーを利用したお客様のリピート率は非常に高いという事実があります。生鮮食品という購入頻度が高い商品を取り扱っているため、ネットスーパーを利用体験すると、お客様は繰り返し注文する傾向があります。したがって、各店舗が一度その経済性を確立し、「閾値」を超えると、再投資の余剰が生まれ、事業成長のサイクルに突入することが可能です。そしてその先には、データを活用した最適化や、店舗とネットスーパーの顧客体験の統合(OMO)による利便性の向上が見込め、さらなる需要を生むという循環に入っていくと考えています。
Stailerの強みは、全方位で機能提供していること
10Xが提供しているStailerは、ネットスーパー事業に必要なすべての機能を提供しています。店舗の商圏での経済性を確立するためには、需要と供給を切り離して考えることができません。Uberが地域の市場で、乗客とドライバーの供給と需要のバランスをとるように、ネットスーパーも需要と供給の双方にアプローチする必要があります。
我々は、それぞれの課題をプロダクトで解決し、事業全体のデータを収集し、ボトルネックを解消することで、市場の成立を実現しようとしています。そして、日本国内において、ネットスーパーの事業を成立させるプロダクトと、実行支援するケイパビリティを持っている会社は、10X以外に存在せず、日々のお買い物に選択肢を追加できるかどうかの、一翼を担う使命感を感じます。
最後に
このように、少年野球は選手同士、ネットスーパーは店舗と顧客がつながり、ネットワークを形成して相互に依存しています。そしてネットワークが成立し、コミュニティや経済が維持されるためには、一定の閾値を超える必要があることを紹介してきました。
私は、平日はネットスーパーという地域経済の成立に没頭し、週末は少年野球という地域コミュニティを維持することに奮闘する日々を送っています。どちらもメンバーを募集していますが、10Xに関心を持っていただいた方は、採用ページをぜひご覧ください。
そして、10X 創業6周年アドベントカレンダーは、本記事がラストです。25日間の熱い投稿の数々、お楽しみいただけましたでしょうか。一人一人の言葉で、今を切り取っていて、スクロールを止める瞬間が何度もありました。私も、原稿を書き終えてホッとしていますが、次は、全社オフサイトのクイズ大会の企画が舞い込んできましたので、忙しい毎日です。
余談
我ながら厄介な記事を書いてしまったと、タイトルを考える際に気がついて、ChatGPTにタイトル案を作ってもらいました。2つ目を採用です。
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