【中編小説】火焔の中から(第9回)
一九九五年一月十七日。二十一回めの誕生日の深夜、周吾は何度も眼を開けた。長い夜だった。明け方、うつらうつらし始めた時、地鳴りのような轟音が響いたと思うと、一階の店舗にショベルカーが突っ込み、真下から二階の床を突きあげる感覚が周吾を襲った。その後、家屋全体がねじれるように揺さぶられ、細長い洋服ダンスが周吾の上に倒れてきた。隣室から「うでがぁぁぁぁ」という叔母の絶叫が聞こえた。嵐の海原で高波の随(まにま)に漂う小舟のように、板張りの床は大きくうねり、階下では売り物が砕ける音が鳴