Discover 2022-7,8より。医療におけるAI 4

今回で「医療におけるAI」についてはは終わります。
その後、それに絡めてこれからのAIについての私見をご紹介しようと思っています。
私としては、そんなに悲観することではないような気がしているのですが。
それでは本題に戻りましょう。

AIによるセラピーが浸透することで、人間が行うセラピーが高価になるかもしれません。

これ、歴史の流れとしてはすごく当たり前のものかもしれません。
例えば、職人さんが1点1点作っていたものは高かったのですが、機械を使って大量に作るようになって安くなったはずですよね。
さらに、ロボットの発達で、さらに安価になったでしょう。
職人さんが手作りするものを安くはできないので、相対的に手作りのものはどんどん高価になりましたね。

高価になるということは、つまり限られた裕福な人たちのものになるということです。
高級品ということですね。
それは、そういったものが庶民の手の届かないものになるということ。
ですから、対人間のセラピーは庶民の手の届かないものになるのかもしれません。

AIはそれを作った人のキャラクターに依存するので、そのキャラクターに合っていない人には合わない可能性があります。

何をいっているかと言いますと。
AIを作った人のキャラクター(人種、国籍、性別、年齢など)が、そのAIに複製されます。
なので、そのキャラクター以外の人、例えば作った人が白人の男性だった場合、日本人の女性には合わない可能性が高くなります。

特に決定的なのは「言語の違い」のようです。
というのも、セラピーにおいては会話の中で症状を診断していきます。
セラピーで使用している言語が母国語の人とそうでない人では、表現の仕方が違ってきて当然なので、セラピーで使われる言語が母国語でない人に対してはどうしても診断が正確ではなくなります。

AIを作った人のキャラクターがそのAIに複製されることで、その人の偏見や固定観念も複製されることがあります。

固定観念、最近はステレオタイプ(stereotype)とそのまま使われることも多くなりました。
偏見というと多分私も含めてみなさん気をつけようと考えるのですが。
固定観念というのはなかなか気づかなかったりします。

一番わかりやすいのは男女差。
男性は強く女性は弱いとか、こんなところでしょう。
あとは人種。
日本人は勤勉、なんてのも良い意味かもしれませんが固定観念ですね。

この固定観念、私見ですが悪いところだけではないと思います。
ある程度当てはまる固定観念であれば、それをもとに推定・行動することで間違った行動を防げますからね。
ただ、その固定観念に当てはまらない人にってはとても苦痛でしょう。

そして、セラピーにおいては、固定観念から外れた人に対しての誤診につながるわけです。

そして、これらよって、「治療を必要としている人」にとって適切でない治療を受けることにつながります。

これについては本文中であまり詳しく解説されていなかったので。
私の推測になりますが。

治療が必要な人と治療のためのAIを作る人の状況が、あまりにかけ離れているために適切な診断ができなくなる。

ということではないかと考えます。
セラピーが必要な人の多くは社会経済的な地位が低く、肉体的・経済的に圧迫されている人が多くいるようです。(これは本文中の別の場所に書いてありました。)
対して、AIを作る人は十分なお給料をもらっているでしょうし、社会的な地位もあり、おそらく肉体的な圧迫を受けるような状態にはないでしょう。
ある意味、恵まれた人ですね。

さて、恵まれた人に恵まれていない人の気持ちがわかるでしょうか?
非常に聡明な人で、類まれない推理力を持っていれば、もしかすると恵まれない人の状況を正確に推定できるかもしれません。
でも、そんな特殊な人だけがAIを作っているわけではないでしょう。
普通の(もしくは普通より多少良い)頭脳で、そこそこの推理力を持っている人がAIを作っているという可能性が高いのではないでしょうか。

さらに、豊かな人間性も必要になるでしょう。
他人の痛みを自分のことのように感じれる共感性というのでしょうか。
他の条件を別にしても、このキャラクターだけでも持っている人は稀だと思います。

非常に聡明で、類い稀ない推理力を持ち、豊かな人間性を備えた人物・・・
そんなスーパースペシャルな人が、たまたま作ったAIというのは、ちょっとその存在を信じることができないくらいのものだと感じます。

ということは、AIによるセラピーに未来はないのでしょうか?

本文では別のところにありましたが、その鍵はデータの量かもしれません。

別件で触れられていたのですが。
AIのいろいろな問題点を解決していく鍵となるのは、データの量なのかもしれません。

ステレオタイプに関する問題も、世の中にはさまざまな人がいるということを”データとして”AIに学習させれば解決するかもしれません。
恵まれない人の状況を、”データとして”AIに理解させれば、恵まれない人に適切な診断ができるようになるかもしれません。
(これ、AIがスーパースペシャルな人に成長する、ということなのかもしれませんが)

何にせよ、セラピストが不足している以上は、AIによる診断を改良してその有用性を上げていくしかないんです。

とはいえ、限界はあります。どう頑張っても今の所AIは”人”にはなれないので。

どういうことかというと、「AIには生の人間同士のやり取りをコピーすることはできない」ということだそうです。
ということで、対人セラピーの一つのツールとしてAIは発展させていく必要がある、と締めくくっています。

うーん、私が日本人だからでしょうか。
この辺り、必ずしもそうではないような気がしますが・・・

そういったことも含めて、次回は「これからのAIとの付き合い方(思い切り私見)」をお届けしたいと思います。



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