おいしいチキンはどこにある。
9月21日深夜。
六本木アートナイトの製作が佳境に迫っている。
余裕がない。
製作内容については詳しく書けないが、もくもくと作業をしている。
お腹がすいた。
余裕はないけど、お腹はすく。
コンビニに行きたい。
展示会場のテナントの扉を開けて、深夜の六本木けやき坂に出る。
9月21日27時のけやき坂では、プロ集団たちがせわしなく街路樹にイルミネーションを取り付けている。もうクリスマスの準備なのか。
「さすがはプロ。自分もこれくらいの余裕を持って行動したい」
タスクをうまく処理できず、あたふたしている自分に落ち込みながら、LEDで明るいけやき坂を上り、コンビニに入る。
何を食べようか。
店内に響く、アイドルの元気いっぱいな曲を浴びながら疲れた脳が考える。
制作が一番の楽しみではあるが、
ご飯はもっと楽しみである。
どんなに気分が落ち込んでても、ご飯を食べるとそれなりなレベルまでは回復するから、ご飯は大事だ。
プライオリティ高めの食事ではあるが、貧乏性が抜けずに安めおにぎりを2つ、糖分高めの飲み物をそそくさと取って、レジに向かう。
レジには誰もいなくて、陳列にいそしむ中東出身のお兄さんに「すいませーん」と声をかける。東京のコンビニの異国感がやっぱり好きで、気だるそうに働く海外出身の方を見るとありがとうの気持ちが絶えない。
「お客様は神様」時代を終わらせてくれたのは紛れもなく彼らである。
中東お兄さんは、パック飲料の陳列をしていた。作業のキリが悪かったのだろう。呼んだあともチラチラこっちを見ながらも陳列をしばらく続けていた。
こちらとしても、何も急いでいないし、なんなら気分転換にコンビニ来ているので、レジ近くの商品を物色しながら待っていた。
しばらくして、兄さんが
「おまたせしました〜」
と笑いながらやってきた。
この感じがとてもいい。
むしろ、「自分でレジ通しといてー」くらい言って欲しいし、言ってくれれば陳列も手伝う。
「3点デ363円デスー。」
ニコニコしながらおつりを渡してくれた。
するといきなり、
「ドレ食ベマスカ?」
レジ横のフライドチキンの什器を指しながら、彼が言った。
展開が掴めない僕に気付いたのか、「どうせ捨てるから、どうせ捨てるから」と、熱々のチキンを取って、冷たいおにぎりがある袋に入れてくれた。
とっさに自分も、
買ったミルクティーを「どうせ捨てるから」と差し出し、
2人で笑った。
コンビニを出て、おにぎり2個とチキン1枚を提げながら、けやき坂を降りる。
イルミネーションのプロたちは片付けを終えている。
レジ袋越しに感じるチキンの熱。これが、余裕なのかもしれない。
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