馳月基矢

はせつき・もとや 小説を書いています

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マガジン

  • 姉上は麗しの名医

    2020年4月7日刊行『姉上は麗しの名医』(小学館時代小説文庫)に関わるエントリー。

  • 五島紀行② #goto201809

    2018年9月、前月には行けなかった久賀島と奈留島を訪れたこと。椿油を作ったこと。

  • 五島紀行① #goto201808

    2018年8月、五島に渡ったこと。 久々の五島だった。 福江島、中通島、若松島。

最近の記事

ミュージカル『刀剣乱舞』、7つの物語で3つの時代をたどる旅! 時代小説家の年末年始

 旅行も帰省もできない年末年始、ステイホームならではのやり方で楽しむことにした。そういうわけで、dアニメストアを利用開始。ミュージカル版の『刀剣乱舞』を視聴した。おもしろかった!  考察とか解説とか、そういう大仰なことはできない。ただ、感じたことを書き残しておきたいと思った。それだけの文章だ。  まず前提として、私は舞台鑑賞が好きだ。弟がアマチュア演劇をしていることもあり、現代演劇のストレートプレイや朗読劇を年に数回観に行っていた。  2.5次元の舞台を視聴したのは『刀

    • 近況とか、お知らせとか

       12月が始まった。ほったらかしだったnote、そろそろ復活させようと思う。サムネイル画像は、ほったらかし期間中に撮ったコスモス。  ところで、来月に新刊が出ます。新年早々、たいへん血なまぐさいです。 『帝都の用心棒 血刀数珠丸』 小学館時代小説文庫より2021/1/4発売  時は大正2年。武士の時代は既に終わった。市民の時代、科学の時代、工業の時代が訪れたとも言われる……けれども。  あらゆる価値観が移りゆく中で、前を向く人、先を急ぐ人、取り残される人、後ろを向いたま

      • 半年前のこと。

         だいぶ久々のnoteになってしまった。日記はもともと苦手だから、「気が向いたときにだけ書こう」くらいの心構えではあるのだが。  そういえば、デビュー作『姉上は麗しの名医』発売から半年が過ぎていたことに気が付いた。10月7日が半年記念だった。  2020年4月7日といえば、緊急事態宣言が出された日でもある。半年前の今頃は、これからどうなってしまうのか、日本じゅうが不安に閉ざされていた。  個人的には、3月末から発売日までの10日間ほどがいちばん不安だった。  3月下旬

        • 「おもしろい」を共感できたら幸運だと思っている

           2020年7月10日、豪雨の影響で電車が止まりがちな中、5ヶ月ぶりに長崎に行った。その機会に、長崎ローカルのテレビと新聞の取材をしていただいた。  4月に刊行した時代小説『姉上は麗しの名医』について、その内容であるとかデビューまでの経緯であるとか。あるいは、新型コロナ禍の自粛期間中に何を考えていたのかとか。  感想。やっぱりしゃべるの下手ですね、私……。  例えば「本作に込めたメッセージ性やテーマとは?」という質問にバシッときれいな答えを出せたら格好いいんだろうなと思

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        • 姉上は麗しの名医
          5本
        • 五島紀行② #goto201809
          4本
        • 五島紀行① #goto201808
          8本

        記事

          五島、世界遺産の教会を訪ねる[番外編] #goto201809

           久賀島と奈留島にある世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の教会を訪ねた旅、最終日。両親宅にて椿油を作った。  前回分、#goto201809③はこちら↓ ◇ 2018/9/18  五島にはたくさんのヤブツバキが自生している。椿油は古くから五島の特産品だったらしい。  2020年4月に刊行した『姉上は麗しの名医』には、五島に似た離島藩「日島藩」が登場し、その特産品である椿油が物語のキーアイテムとなっているが、匂いの描写などは実際に作ったことがあるから可

          五島、世界遺産の教会を訪ねる[番外編] #goto201809

          文章を書いていると喉が渇く

           私の文章の主成分は肉声である。  どういう意味かというと、文字どおりだ。声として出てくる言葉を文章に編んでいる。文章を語りながらワープロソフトに打ち込んでいる、というか。  なので、執筆中は常にぶつぶつ言っている。地の文もセリフも、全部ぶつぶつ言いながら書いている。たぶんそれなりに感情を込めて(表情が変わっている自覚もある)、ぶつぶつ演じている。  次の一文をどうしようか、と止まって、これだ、という書き出しを思い付くときは、けっこう大きな声が出る気がする。カフェやファ

          文章を書いていると喉が渇く

          五島、世界遺産の教会を訪ねる③ #goto201809

           世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」を訪ねる旅、奈留島《なるしま》編。地元の人は「なっじま」と呼んだりする。  父方の実家が奈留島にあるので、祖母の顔を見るのも兼ねて、朝のフェリーで渡った。  前回分、#201809②はこちら↓ ◇ 2018/9/17  本土からの直接の船便がない島のことを「二次離島」と呼ぶ。奈留島は高速船が寄らず、長崎とを結ぶ便は昼のフェリーのみでたいへん不便、同県内なのに長崎‐奈留の日帰り出張は不可能。さしづめ「一.五次離島」と

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          舞台『刀剣乱舞』シリーズ全作観た! 歴史時代系モノカキ的まとめ

           舞台『刀剣乱舞』シリーズが無料配信された。2020年5月25日から31日の間、1日1本、毎晩20:00スタートで視聴する機会を得た。  刀剣乱舞はもともとオンラインゲームだ。刀がその来歴や形状になぞらえた姿の男性戦士となり、歴史改竄を目論む敵と戦う、というのが基本コンセプト。ジャンルは育成系シミュレーションゲームだ。舞台版はゲームから派生したコンテンツということになる。  私はゲームのほうは未プレイである。育成系SLGが苦手な上に毎日ログイン系も苦手、ストーリーのクリア

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          読書記録 #2020年4月刊応援 5月分

           緊急事態宣言が解除されたものの、いまだ警戒を怠ってはならず、外出自粛が求められている。  先月に引き続き、書店での新刊の売り上げは全体として落ち込んでしまったと聞く。この時期に本を出した作家は嘆きたくもなるだろう。危機的状況であったことは、4月分の読書記録で言及した。  書店が休業し、通販も渋滞し、本がとても売れづらかった。そんな状況の中、2020年春刊行の本をTwitter等で紹介し応援する企画によって、4月7日に『姉上は麗しの名医』を刊行した私も、精神的にずいぶん救

          読書記録 #2020年4月刊応援 5月分

          五島、世界遺産の教会を訪ねる② #goto201809

           2018年6月に正式に認定された世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」には、五島列島の教会とその周辺地区も含まれている。  それら世界遺産地区の1つ、久賀島《ひさかじま》を回った。自転車で。  前回分、#201809①はこちら↓ ◇ 2018/9/16  KADOKAWAの小説投稿サイト、カクヨムで公開している『エボリューション・アイランズ!』の登場人物がロードバイクで久賀島を回っている。その真似というか、セルフ聖地巡礼として、父に借りたマウンテンバイ

          五島、世界遺産の教会を訪ねる② #goto201809

          続)『姉上は麗しの名医』の作り方。下地編。

           高校時代に観た舞台とその原作小説、そしてあるテレビ番組が『姉上は麗しの名医』の下地として大いに作用している、という話。  あらすじには一切出てこない部分も含む話になるので、ネタバレを見たい人だけ読み進めてください。  祖父が「時代物」好きだったので、気が付いたら『水戸黄門』の決め台詞は言えるようになっていたし、藤沢周平氏や山本周五郎氏といった御大の名前は知っていた。このあたりの素養がむろん大きいのではあるけれども。  それはそれとして。  『姉上は麗しの名医』の下地

          続)『姉上は麗しの名医』の作り方。下地編。

          五島、世界遺産の教会を訪ねる① #goto201809

           8月の旅では五島列島の全部の島を巡ることができなかった。全部の島というのは、上五島の中通島と若松島、下五島の奈留島、久賀島、福江島の5つだが、奈留と久賀まで行く時間が取れなかったのだ。  9月半ばに再び五島を訪ね、福江島の両親宅を拠点として、行けなかった奈留と久賀への日帰り旅を決行した。  奈留島の江上天主堂とその集落、久賀島の旧五輪教会およびいくつかの集落は、2018年6月に世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」に含まれている。  それらの場所を訪ねたこ

          五島、世界遺産の教会を訪ねる① #goto201809

          自己紹介

          1985年、長崎県五島列島生まれ。 京都大学文学部卒、同大学院文学研究科修士課程修了。 2019年、小学館第1回日本おいしい小説大賞に『ハツコイ・ウェーブ!』で最終選考に残り、デビューが決まる。 旧ペンネームは氷月あや。 ◇ 2020/4/7 姉上は麗しの名医(小学館時代小説文庫) 第9回日本歴史時代作家協会賞、文庫書き下ろし新人賞受賞 2021/1/4 帝都の用心棒 血刀数珠丸(小学館時代小説文庫) 2021/6/10 拙者、妹がおりまして①(双葉文庫) 202

          自己紹介

          読書記録 #2020年3月刊応援 #2020年4月刊応援

           今、新刊書籍がまずい。非常に売れにくい。  2020年4月7日、7都府県に緊急事態宣言が出された。これを受けて、多くの大型書店が臨時休業を余儀なくされた。店頭に並んでいるはずの本はシャッターの向こう側。読者が手に取れない状況になってしまった。  そこで4月上旬から有志の声によってTwitter上で動き出したのが「#2020年4月刊応援」企画である。  書籍が買える通販の紹介、新刊書籍の購入や読了のツイート、読書メーターへのリンクなど、#2020年4月刊応援のタグからた

          読書記録 #2020年3月刊応援 #2020年4月刊応援

          数年ぶりに五島に帰った⑧ #goto201808

           2018年8月の五島紀行、最終日。この日は1日かけてフェリーで福江島から福岡に渡った。  前回分、#201808⑦はこちら↓ ◇ 2018/8/30  乗船したのはフェリー太古。福岡と五島列島を結ぶ船。下り便は深夜、23:45に博多港を出て、宇久、小値賀、上五島の青方、奈留島に寄港し、朝8:30に福江港に到着する。上り便が乗船中のこちら。  上り便は、10:15に福江港を出たら、奈留島を経由せずに、上五島の青方へ。  奈留島にある奈留高校には、荒井由実だったころ

          数年ぶりに五島に帰った⑧ #goto201808

          『姉上は麗しの名医』の作り方。初期レシピなど。

           初期構想の頃の話。本作の柱を3点挙げるなら、 ①バディもの+姉上、という関係性 ②漢方医学 ③海を武器とする「マイ海坂藩」 といったところだろうと思う。  これら3点は、構想の初期段階からブレることなく柱として機能していた。  ちなみに、というか。  弥助、忠司と房、於富はテイクを重ねるときに180度キャラが変わり、奉先はテイク3くらいでいきなり登場したが、柱はまったく動いていないので、彼らの演じ方を変えることくらいは大きな改稿だとは感じなかった。 ◇ ①バディも

          『姉上は麗しの名医』の作り方。初期レシピなど。