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【短編小説①】傘地蔵(表)&(裏)

1.はじめに

平素よりお世話になっております、ハセサムです。
普段は、「ハセサムの隠し玉」というブログの運営をしております。

いくつか短編小説を書いていたはいたのですが、
投稿するかどうか悩んでいた関係もあり、現在に至っていました。

今回初めて投稿する短編は、初めてという事もあり読みやすさ重視の短編小説での投稿とさせて頂きます。
タイトルの通り、2個の話で1つのものとなっていますが、元々「傘地蔵(裏)」の方から書き始めていた経緯もあり、順番に読んでいただいて、なるほどね。と思って頂けるような内容になっています。怖い話が好きな関係上、文体もそれっぽい感じですが安心してお読みいただけます笑

初投稿なので、至らぬ点もありますが楽しんで読んでいただけたら幸いです。

タイトル画像:フォト蔵(傘地蔵さん)より

2.本編 ~傘地蔵(表)~

明日が引っ越しの日のはずなのに、窓から見える粉雪と共に、僕は片付いていない荷物に埋れていた。

引越しに際して、1週間程前から、自分の家に取りに来るという条件付きで友人に自分の不要な物を引き渡しているところだった。

なるべく引越し荷物を減らしたかった僕は、
電子レンジや簡易冷蔵庫などの、少し値が張るが持って帰ることは出来なくはない物の処分に困っていた。

そんな時、僕の家に遊びに来ていた友人も引越しをしたばかりで、電子レンジを欲しがっていた事を思い出し、すぐさま連絡を取ると2つ返事で欲しい旨が返ってきたのだった。

他の友人にも尋ねてみたところ、意外と色々な物が重宝されるようで、
「じゃあ俺はこれが欲しいな」
「じゃあ私はこれ」
電子レンジ、簡易冷蔵庫、フライパン、鍋、カラーボックス、LEDライト、などなど、みるみる内に部屋が綺麗になっていったので、僕は気を良くしてどんどん手放した。荷物が多い引越しは意外と費用がバカにならない。そんな感じで、スッキリした我が家から気分良く退去出来るはずだった。

ピンポーン
引越しの日の2日前で、細々した荷物を段ボールに詰めていたところだったが、玄関のチャイムが鳴っていた。
インターホンに出てみると、どうやらこの前電子レンジを引き渡した友人だった。聞いたところによると、電子レンジであまりにも簡単に料理が作れるので、デザート類を作りすぎてしまったようだ。
幸い、甘いものは苦手ではないのでありがたく頂戴することにした。

ピンポーン
貰ったチョコケーキを食べながら引き続き、細々した荷物を段ボールに詰めていたところだったが、再び玄関のチャイムが鳴っていた。
インターホンに出てみると、どうやらこの前簡易冷蔵庫を引き渡した友人だった。聞いたところによると、簡易冷蔵庫が手に入ったことにより、買い溜めしていたアルコール類のキャンペーンに当たった為、この前のお礼に持ってきたとのことだった。缶ビールではあったが、6本入りのものを3箱も持ってきてくれており、飲み切れる気がしなかったが、断りきれなかった為、ありがたく頂戴することにした。

ピンポーン

ピンポーン

ピンポーン

ピンポーン

立て続けに
フライパン、鍋、カラーボックス、LEDライトなどなど、引き渡した友人が、あと数日の我が家に大挙して押し寄せてチャイムを鳴らしていた。

笠地蔵のようなお伽話では無いが、明日が引っ越しの日のはずなのに、窓から差し込む粉雪と友人達との懐かしい想い出と共に、僕は片付いていない荷物にしばらく埋れていた。

3.本編 ~傘地蔵(裏)~

明日が引っ越しの日ではあるが、窓から見える粉雪と共に、僕はほぼ片付いた荷物と共にいた。

引越しに際して、1週間程前から、自分の家に取りに来るという条件付きで友人に自分の不要な物を引き渡しているところだった。

なるべく引越し荷物を減らしたかった僕は、
電子レンジや簡易冷蔵庫などの、少し値が張るが持って帰ることは出来なくはない物の処分に困っていた。

そんな時、僕の家に遊びに来ていた友人も引越しをしたばかりで、電子レンジを欲しがっていた事を思い出し、すぐさま連絡を取ると2つ返事で欲しい旨が返ってきたのだった。

他の友人にも尋ねてみたところ、意外と色々な物が重宝されるようで、
「じゃあ俺はこれが欲しいな」
「じゃあ私はこれ」
電子レンジ、簡易冷蔵庫、フライパン、鍋、カラーボックス、LEDライト、などなど、みるみる内に部屋が綺麗になっていったので、僕はほっとしていた。荷物が多い引越しは意外と費用がバカにならない。

ピンポーン
引越しの日の2日前で、細々した荷物を段ボールに詰めていたところだったが、玄関のチャイムが鳴っていた。
インターホンに出てみると、どうやらこの前電子レンジを引き渡した友人だった。聞いたところによると、この前のお礼を兼ねて渡したいものがあるとの事だった。
幸い、大きな荷物では無かったのでありがたく頂戴することにした。

ピンポーン
貰ったものを懐かしみながら引き続き、細々した荷物を段ボールに詰めていたところだったが、再び玄関のチャイムが鳴っていた。
インターホンに出てみると、どうやらこの前簡易冷蔵庫を引き渡した友人だった。聞いたところによると、こちらも僕に対してこの前のお礼を渡したいとのことだった。
嫌な予感がしたが、断りきれなかった為、ありがたく頂戴することにした。

ピンポーン

ピンポーン

ピンポーン

ピンポーン

立て続けに
フライパン、鍋、カラーボックス、LEDライトなどなど、引き渡した友人が、あと数日の我が家に大挙して押し寄せてチャイムを鳴らしていた。

笠地蔵のようなお伽話では無いが、明日が引っ越しの日のはずなのに、窓から差し込む粉雪と友人達との懐かしい想い出に、僕はしばらく埋れていた。

不要だった記憶や思い出を引き渡したかつての友人達は、再び僕の事を思い出す事もなく、生涯を終えたという。

4.あとがき

元々本作は、傘地蔵(裏)から書き終わったのですが、あまりに暗い話だったこともあり、追加で傘地蔵(表)を書いた経緯があります。基本的に、分にしようと思うと話が暗くなってしまう傾向があるので、傘地蔵(表)のような明るい?話は微妙に苦労しました。
タイトル自体も、傘地蔵(表)の方を書き終わってから(全体通して最後まで書いてから)、これ童話の傘地蔵っぽくないか...と気づき、それっぽいように細部を修正した経緯もあります。(細かいところでいうと、それぞれの冒頭の「窓から見える粉雪」。)
あと、傘地蔵(表)は童話の傘地蔵っぽいですが、傘地蔵(裏)は...別タイトルな気がしますね笑

お読みいただきありがとうございました。
駄文失敬

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