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八ヶ岳南麓の湧水地を巡る

八ヶ岳南麓は、日本有数の湧水地です。
地名にも表れていますよね。小泉とか大泉とか、まさに「泉」がたくさんあるのです。小淵沢という地名も、まさに水にあふれていますね。

大滝湧水(タイトル写真も大滝湧水です)

少し視点を広げて「山梨県北杜市」という単位で考えると、1つの市に3つの名水があるという日本一の自治体なんです。

北杜市内には日本名水百選が3カ所認定されています。
八ヶ岳南麓高原湧水群(三分一湧水、大滝湧水)
白州・尾白川
金峰山・瑞牆山源流(平成の名水百選)
北杜市は日本名水百選に3カ所選ばれている日本一の名水の里として、これからも水環境の保全活動を続けていきます

日本一の名水の里 北杜市の名水百選 - 山梨県北杜市公式サイト (city.hokuto.yamanashi.jp)

これはなかなかすごいことで、3つとも水の由来が違うんですね。
北杜市は大きな3つの山系に囲まれているからです。

  • 北杜市の北側:八ヶ岳

  • 北杜市の南西側:南アルプス(白州・尾白川)

  • 北杜市の東側 :秩父多摩甲斐国立公園(金峰山・瑞牆山等)

だから、湧水好き、渓流好きにとってはたまらない環境がそこいらにあります。今回は、八ヶ岳南麓にある湧水地をご紹介しましょう。


三分一湧水(さんぶいちゆうすい)

八ヶ岳南麓の湧水の中でも、一番有名なところです。
駐車場も広いし、直売所と蕎麦屋さんもあるし、何より広い公園としてきれいに整備されていて湧水の流れをさかのぼりながら散策を楽しめます。

農業のための水利権は昔からの重要事項。ここでは、湧き出す水を三等分するという独特の仕組みが江戸時代に整備されたそうです。

源流からの流れ(左上)が、三等分されて流れていく

まあ、ほんと分かりやすい仕組みですよね。
でも、この仕組みをつくるまでに、相当な駆け引きと調整があったのかなあとも思います。

この三分割の場所のすぐ先には、湧水の源流地があります。
この場所だけは柵に囲われて入れないようになっています。逆に言うと、ここ以外は自由に立ち入りできますし、水に触れることができます。

三分一湧水の源流

最初に三分一湧水に行ったときには、ちょっとした思い出があります。
2年前の9月上旬でした。息子2人は昆虫を探して、三分一湧水の森の中を探し回ったのですが、目ぼしい昆虫を見つけることができませんでした。
あきらめて、三分一湧水のお蕎麦屋さんで昼食を取っていると、お店の人が声をかけてくれたのです。
「カブトムシが網戸にくっついてるんだけど。ほしい?」

欲しいも何も、まさに探し求めていたものです。
大感謝で、カブトムシのメスを頂いてしまいました。
その日の晩も、宿泊したホテルの部屋のすぐ近くでミヤマクワガタを見つけたりと、なかなか貴重な体験でした。
このころから、八ヶ岳の自然が私たち家族を勧誘してくれていたのかもしれません!? (その後、八ヶ岳南麓におうちを買うことになりました)

ここの直売所も、いろいろなものが安く揃っていて大好きです。
観光地であるものの、観光地価格ではなく野菜とかとてもリーズナブルです。地元の高校生が作った農産物とかもありますしね。

あと、不定期で野点の珈琲屋さんが出ています。
私はまだ飲んだことがないのですが。
後から知ったのですが、私が熟読している作家の方ご本人が珈琲を入れてくれるのです。なんと。驚きでした。
なかなかタイミングが合わずにまだお話しすることができていないのですが、今度こそ珈琲をいただきに行こうと思っています。

井詰湧水(いづめゆうすい)

ここは、比較的マイナーですね。
井詰湧水は美しい場所ですが、かなり細い未舗装道路を通る必要があり、ちょっと行きにくい場所にあります。一応、私の普通の車(2WD)でもちゃんとたどり着けました。私はいつも北側から入って南側に抜けますが、特に南側の道はガタガタなので要注意です。
そのせいか、ここに行ったときに他の人に会ったことがありません。
道路の途中にあるちょっとした広場に車を停めて、そこから1分ほど歩けば湧水地にたどり着きます。

井詰湧水のモミの木

湧水の手前、最初に見えるのがご神木のモミの木です。
このあたりから、ところどころ地面がぬかるんでいます。
私は普通の靴で行ったので、ぬかるんでいない部分や石の上を見つけて歩きましたが、長靴のようなぬれてもいい靴のほうが安心して歩けるでしょうね。

湧水地ならではの美しい水と苔

湧き出た水が、沢となって流れていきます。
その沢の周囲や真ん中に大きな石や流木が転がり、水を好む苔がふさふさと茂っています。

沢と湿地帯と陸地が入り混じる

こういう湧水地に行って何を感じるかは人それぞれですね。

5年前の自分は、あまり感動しなかったと思います。ふーん、湧き水ね。苔ね。きれいだね。てな具合で。3分経ったら、そろそろ帰ろうかと。

今の自分は、15分くらいここの景色を味わいます。いろいろ歩いて、苔の種類を観察して名前を調べてみたり、美しい野草の花の写真を撮ったり。水に触って冷たさを感じたり、川底の水生昆虫を探したり。ちいさなエビっぽいものはいましたね。ヨコエビなのかな。

将来の自分としては、ここで何時間も過ごせるようになりたいですね。何を観察するでもなく、ただ水のせせらぎの音を聞きながら、この場所の心地よさを堪能する。
そういうことが心の底から楽しめるようになるには、もう少し心の修行が必要な気がします。忙しく、効率性を求めるライフスタイルから抜け出せていないですからね。

天然の野草苔盆栽

こんな場所も見つけました。天然の苔盆栽。可憐なツリフネソウが咲いています。人智を超えた天然の芸術でしょう。

思わず持って帰りたくなりますけどね。そこは自制。
持って帰ったとしても、この姿のままに保つことは難しいでしょう。豊富な水場でなければ、苔はすぐ乾燥して茶色くなりますし、花も咲いてくれません。それは悲しいですよね。

野草、キノコ、昆虫などの情報をどこまでネットに載せて良いかは、とても気を遣うところです。
珍しい生物の場合は、絶対に載せてはいけないですよね。心ない人が乱獲してしまうので。ありふれた生物であれば、今のところは許容されるかなと考えています。でも、キノコとかクワガタムシとかは、詳しい場所まで書いてはいけないですよね。狙う人が多いので。
良い場所を紹介したいという前向きな気持ちと、心無い人への警戒心。そのバランスを取りながら今後も記事を書いていくつもりです。
この記事を読んで頂いた方には、自然を大事に、自然をあるがままに守っていただければありがたいです。

大滝湧水

ここも風情のある湧水ですね。
大滝神社があり、その横を湧き水が流れ落ちていきます。
Googleマップにある写真(上)と私が撮った写真(下)と、全く構図が同じですね。石垣の苔の生え方で違いが分かると思いますが、違う写真です。みんな、この角度で撮りたくなるものなんですね。

神社と湧水という、鬼に金棒状態

湧水が流れ落ちる先には、もちろん美しい苔があります。
こういうのは、ついシャッターを押してしまいますね。
ちなみに普通のiPhoneで撮ってます。しかも、5年落ち以上のiPhone X。長持ちするのでまだまだ現役です。コンパクトなスマホが好きなので、最近の
大きなiPhoneは好みではなくて。

スマホでも、落水をきれいに撮れるものですね

この神社を中心として、大滝湧水公園という公園になっています。
湧水を引き込んでワサビを育てていますし、ニジマスやヤマメの養殖もおこなっています。
4月から10月の間は釣り堀になっていて、釣った魚を焼いて食べることもできるようになっています。至れり尽くせりじゃないですか。

ニジマスが泳ぐ池

私が行ったのは釣り堀が終わったシーズンだったので、閑散としていて誰もいませんでした。暖かいシーズンに再訪する予定です。

女取湧水(めとりゆうすい) ※未訪問

八ヶ岳南麓でもう1つ有名な湧水が、女取湧水です。
以前からここに行きたいと思いながら、行き方が分からず、いまだに行けていません。
ネットで探すと行き方が書いているサイトもあるのですが、車を駐車できるような場所が見当たらず、いつも素通りしてしまいます。広くはない道ですが、路駐して行くしかないのかなあ。もしくは、南のほうに車を停めて、てくてく歩いていくしかないかなあと思っています。
行くことができたら、また記事にしようと思います。

八右衛門出口湧水

八右衛門出口湧水/富士の国やまなし観光ネット 山梨県公式観光情報 (yamanashi-kankou.jp)

あまりにもマイナーなスポットすぎて、Googleマップにもまだ登録されていません。上記リンクから場所が分かりますが、甲斐小泉駅の近くです。泉ライン沿いにあり、「いっぴん工房」という流線形の木工作品が特徴の素晴らしい家具屋さんや、「昼のふくろう」というフクロウが大好きな店主のカフェを過ぎたあたりです。

山道の中にひっそり立つ看板

車が数台停まれる場所があるので、そこに停めて付近を散策。
まあ正直、ここはそんなに感動するような場所ではありません。
このあたりには小さな沢がたくさん流れていますが、そのうちの1つというイメージです。

森の中の小さな沢というイメージ

なお、泉ラインをさらに先に進むと、アップルパイで有名な「パイの家エム・ワン」さんがあります。
ここの敷地の一角に、地下からくみ上げた八ヶ岳の天然水を自由に使わせていただける蛇口があります。こういうサービスも、とてもありがたいですね。


村山六ケ村堰

ここは湧水地ではないので、番外編ですが。
有名な吐竜の滝(どりゅうのたき)の下流にあり、江戸時代初期にこのあたり一帯に川俣川の水を引きこむために作られた施設の一部です。

疎水100選にも選定されている

今は自然型水路として、側面や底面をコンクリートで固めるのではなく、自然の石を使って生物が住みやすい環境にしています。

人工物とは思えないほど、自然な風景

魚がいないかなと思って覗いてみましたが、あまり魚はいなさそうでした。残念。
でも、マイナスイオンが出まくりといった雰囲気で、とてもいい感じです。ここにキャンプ用の椅子とかを持ち込んで、熱いお湯が長持ちする「山専ボトル」に熱いコーヒーを詰め込んで、ゆっくり仕事をするというスタイルもありなんじゃないかと思ってます(未実施)。

のんびりと時間が流れます

湧水地、なかなかいいですよ!

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