第5回東奥文学賞 震災、モンペ、ストレス……問題山積ながらも小学校の管理職教諭が抱く希望
花生典幸(はなおいのりゆき)「月光の道」:大賞。八戸の市立小学校の教頭を務める片野秀一の元へ、福島から中嶋しおりという少女が転校してくる。しおりは震災の余波から、人前では言葉を話すことができないらしい――。小学校の教頭・校長という管理職の日々をリアルに描いている点が新鮮で、担任を持たない立場でも相当ハードな業務なんだなと伝わってきます。作中でそれを「感情労働」と呼んでいますが、これが二重の意味を持つ展開も秀逸。悪行を働いた生徒をただ断罪するのではなく、あくまで教育として反省を促す着地点を見出そうする姿勢にも共感できました。
また選考委員の三浦氏の講評も素晴らしく、その厳しくも温かい批評は、この小説の根の深い暗い一面を的確に照射していて、別の楽しみ方に気づかせてくれます。
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