着たい服を自分で作れると、自由になれる。
このあいだ行きつけのセレクトショップで、常連客とおぼしき女性から、インスタグラムをフォローしていると声をかけられた。そのセレクトショップはお洋服のお店だけれど、店内の一角でときどきカフェイベントをしていて、わたしがショートケーキ柄のセーターを着てショートケーキを食べているのを見たことがきっかけだという。
「あのセーター、わたしもキットを買ったんです」
と女性は言った。
ショートケーキ柄のセーターは、東海えりかさんというニットデザイナーさんの作品で、わたしは本を読んで毛糸を揃えたけれど、展示会ではキットが販売されていた。
「あれなら編めるかと思ったけれど、まだ編み始めていない、編めるか自信がなくて」
という彼女。メリアス編みのシンプルな形で、前身頃の一部にショートケーキが編み込んであるだけの簡単なデザインだから、絶対に編めると勧めておいた。
かくいうわたしも、袖付けありのセーターを編んだのは、ショートケーキ柄のあのセーターがはじめてだったからである。
1着編めると、自信がついて、また次も、となる。
わたしはショートケーキのつぎは、エジプト柄を編んだ。
ブラウン神父の事件簿という、1950年代を舞台にした海外ドラマがある。その劇中で女優さんが着ていたエジプト柄のセーターがかわいくて、編み物好きの友人に見てみて、と勧めたところ、同じセーターの編み図を見つけてくれたのだ。1940年代のイギリスの編み図で、etsyというサイトで販売されていた。
ブラウン神父の事件簿より。ほら、かわいい。
インディ・ジョーンズの映画でも、このセーターを着ている子が出てた。きっと、この年代のものを貸す、貸衣装屋さんにあるんでしょうね。
初心者が、英語の、それも昔の編み図でセーターを編むのはハードルが高かったけれど、かわいい!ほしい!着たい!その一心で、がんばった。
途中、わからないところはYouTubeや編み物好きの方のブログを見たり、友人に聞いたりした。彼女もわからなかったところは、Twitterでつながっているお会いしたことはないイギリス在住の方に聞いてもらった。ずうずうしいと思ったけれど、編み物好きのひとたちは、やさしい。快く教えてくれた。
なので、少しでも編み物をしてみたいひと、いますぐ編みはじめたらいいと思うの。いま編みはじめれば、秋冬が楽しみだし、わからないところがあっても、YouTubeを見れば、たいていのことはわかります。それでもわからなければ、編み物好きを探したらいいと思うの。
はっきり言って、編み物人口って、減ってると思う。だから、たぶん、仲間が増えるのはうれしい編み物好きさんはおおぜいいて、新規参入者にやさしくしてくれます。
わたしは洋裁もするのだけれど、着たい服を自分で作れると選択肢が広がり、とても自由になるし、生きている世界が豊かになる。それに、自分が作ってみるとたいへんさがよくわかるから、作り手への敬意が増すし、見える世界が変わります。着たい服が着られる以上に、得難い体験だと思う。