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歩くあるく:みちのく潮風トレイル日記・第3日(2021年7月18日、鹿狼山。あぐりやー新地駅方面接点33.06km)

園児も登れる鹿狼山

 東北地方梅雨明け3日目の7月18日、快晴の天気予報をもとに鹿狼山登山コースに挑戦。鹿狼山は阿武隈高地の山、標高429.3m。「鹿狼山登るの? ボクは幼稚園のとき登ったよ」と、小学1年生の子どもが教えてくれた。北上コースは田園の中を鹿狼山に少しづつ近づいていく。「鹿狼の湯」の地元新地産そば粉を使った手打ち蕎麦は絶品。

 頂上からは松川浦が見えるが、それ以上に石炭火力発電所・相馬共同火力新地発電所(100万kW×2基)の存在感が大きい。この石炭火力発電所の煙が原因か、日曜にもかかわらず相馬沖の空の大気は、途上国の大都市上空のようにどんより帯状に濁っている。

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【本日歩いた距離】

 ルート上ではあぐりやから新地駅方面接点までの14.61kmに留まる。新地町だけで8時20分から17時40分まで、1日に歩いた総距離は7時間22分、25.04km、31,259歩だった。

 仙台駅では足がふらつき気味だったが、幸い翌日足が痛むようなことはなかった。今回から使い始めたGPSも、分岐点の要所要所で活用できた。

 炎天下ではあったが、海風と林の中の道が多いために、猛暑に苦しめられることはなかった。

純米吟醸酒・鹿狼山

 新地駅からあぐりやに行く途中、左手に後藤酒店がある。純米吟醸酒・鹿狼山のポスターが貼ってある。初めて見るブランドだ。帰宅後ウエブで調べてみると、「新地町産の「ひとめぼれ」、鹿狼山の麓から湧き出る名水「いっぱい清水」を使用し醸造」しているとのこと。醸造は会津坂下の曙酒造。町内でしか発売していないようだ。

 「鹿狼の湯」の食堂には置いていた。

被災者の住宅

 あぐりやの向かいには被災高齢者向けの集合住宅がある。20年後にはどうなるのだろうか。

 新地高校の向かい側あたりにも、被災者が建てたのだろう、新しい戸建て住宅が目立つ。太陽電池を載せている家が多い。

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 相馬市や新地町のあたりはため池が多い。トレイルコースも、ため池の近くを好んで通る。

 淡々とひたすら歩く。無心になれる。前回も書いたような「解脱」の感覚だ。

大槻神社

 あぐりやから4km歩いたところに、杉目大槻神社がある。境内は鬱蒼として風情がある。現在の社殿は1927年造営だが、そもそもは、寿永3年に遡るという。寿永3年は1184年。前年に木曽義仲が平家を都落ちさせるが、この年に宇治川の戦いで義経に敗れ、敗走する。この年、杉目八郎左衛門が但馬の国から分霊したというのも、杉目は平家もしくは義仲の家来だったのかと想像する。

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絶品「鹿狼の湯」の手打ち蕎麦

 「鹿狼の湯」の手打ち蕎麦は絶品。仙台や山形周辺は蕎麦が美味しいが、ここは特に美味しい。切れ味がいい。おすすめのかき揚げ蕎麦の大盛を注文。日本酒の「鹿狼山」もある。みちのくトレイルを達成した暁には、お祝いにここの温泉に入って、蕎麦を肴に「鹿狼山」を痛飲したい。

 梅雨明け最初の日曜とあって、店内には結構客がいる。わざわざ食べに来る価値は十二分にある。家族連れで車で来て、温泉に入って、蕎麦を食べて帰るようだ。新地駅から8km以上歩いて来た人は、私だけのようだが。

 鹿狼山は太平洋から近くて、登りやすい山だから、初日の出を拝みに、元日に登るのが人気だと店内にある。

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 食堂を出て、松川浦方向の写真を撮っていると、子どもが近寄ってきて、「鹿狼山登るの?」と尋ねる。そうだよと答えて、君は登ったことがあるのか、と問い返すと、「幼稚園のとき一度だけ登ったんだ」との答え。幾つと聞くと、小学1年生という。その後も、この子が再び駆け寄って来て、同じ問答を繰り返した。

頂上へ

 ストックをノルディック・ウォーキングポールから、トレッキング用ポールに換えて登り始める。登山道は幾つかコースがあるが、私は、一番ラクそうな「いこいコース」を選んだ。樹海の中をゆるやかな上りが続く、気持ちのいい山道だ。幼稚園児でも登れるはずだ。

 山に登るのは、2019年8月17日、大文字の送り火の翌日に、如意ヶ嶽(大文字山、472m)に登って以来だ。

 登山口から約1時間強、14時5分頂上へ。勢いよく追い越していかれた方に尋ねると、そのご夫婦は、相馬市在住で、前々日大東岳に登ってきたという。今度は雁戸山に登りたいという。鹿狼山は中学時代、近くまでバスで来て、クラスで登ったのが初めてとのこと。私が新地駅から歩いてきたというと驚いていた。

 奥羽山脈側を見ると、足下には丸森町。丸森町と新地町は鹿狼山を境に接していたのだ。阿武隈川も光っている。宮城県在住者としては感慨無量。

 蔵王連峰は残念ながらかすんでいる。青麻山がぼんやり見える程度だ。

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下山

 鈴宇峠方向に下山。急峻でロープを掴みながらでないと降りられない。トレッキングポールが役に立つ。足元も不安定だ。南下コースで登る場合には相当厳しいだろう。

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 下山開始から25分後、振り返ると先ほどまでいた頂上。ジーンとくる。

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 途中で椅子式の案内版を発見。ありがたい。一休み。

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 山頂から約2時間がかりで、南下コースの鹿狼山登山口まで降りる。わずか2.3kmの下りだが、2時間近くも費やしてしまった。

真弓清水

 約20分で、真弓清水へ。500mlのペットボトル3本とも空になっていたから、ここで給水。清冽。美味しい。生気が蘇る。ペットボトル3本に水を詰める。地元の方達に長年大事にされてきた水だ。水を求めに宮城ナンバーの車も来ていた。

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 真弓清水を過ぎて約20分後、いちじくが実りつつあるのを見つけた。あぐりやの「いちじくアイス」のように、いちじくは新地町の名物だ。実りつつある青いいちじくを見るのは初めてだ。既に17時16分だが、新地駅まではまだ5km以上ある。少し焦る。「狼沢(おいさわ)」という地区を通る。鹿狼山といい、狼沢といい、昔は狼がいたのだろう。

 もう1つの名水、右近清水も通って、新地駅に急いだ。楽しみにしていたパン屋のボヌールやすひろ66は17時で閉店。何とか17時40分新地駅発の仙台行きに乗り込むことができた。

 


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