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モノはモノだけれど、それだけではないこと 3月31日

caravan yourwear  3日間の会期の最終日。
どの展示でもそうなのだけれど、何年経とうが、
何回やろうが、私は会期が始まる前は心配で寝が浅くなる。
眠れなくなることもあるし、寝ても夢にまで出てくることもある。

今回は「セミオーダー」「予約制」in-kyoの店舗ではなく、
自宅のハナレ「TONARI」での開催といういくつものハードルがあり、
しかも3月末という年度末とも重なって、事前のご予約も
なかなか埋まらず不安でいっぱいだった。

これではコツコツと準備を重ねて、はるばる秋田から来てくれる
孔代さんに申し訳が立たない。それでもなんとかお客さまや
ご近所友人たちが足を運んでくれて、ふたを開けてみたら
3日間ともいらした方々が皆さんじっくりゆっくりご試着したり、
色や素材を悩んだり、おしゃべりをする時間もあって。
程良い流れと空気感に救われるような、和やかな会となった。
それもこれもお客さまや孔代さんの気配りのお陰。
みなさんの楽しそうな表情を見てホッとし、そして何とも言えない
幸せな気持ちに包まれた。

全てとは言わないけれど、世の中はスピードがどんどん増して、
速い=良いとされることが多い気がする。
もちろんそのことで助けられていることもたくさんある。
それを思うとこの「セミオーダー」は世の流れとは逆行しているのかもしれない。足を運び、実際に見て試着もし、選んで、出来上がるまで待つというゆっくりとした時間。速さを求める人たちには向いていない方法だろう。
でも手元に届くまで待つ時間は、きっとワクワクするものになるだろうし、
届いたその一枚のニットが特別なものになるであろうことは簡単に
想像できる。選んだそのひとときや、やり取りなども思い出すかもしれない。着ていく中で何か困ったことがあったら、お直しもできるという
安心や信頼感が、孔代さんがお客様と直接対話をしていたことですでに
自然と生まれている。
モノがモノだけで終わらずに、そこにはストーリーと満たされた時間が
含まれているということ。見えないものではあるけれど、きっとたぶん
そういったことだろう。

一見高いと思われるかもしれない値段も、10年後でも着続けられるもの、
ずっと着たいと心底思えるものに出会えたとしたら、決して
高い買い物にはならないと納得してもらえるはず。
そうしたものを届けたいという気持ちからyourwearはスタートしている。
小さな店、メーカーだとしても、小さいからこそできることもある。
yourwearの取り組み、試みには学ばされることがたくさん。

ひとつひとつ積み重ねていくゆっくりとしたこの速度感の心地良さ。
作り手と使い手のつなぎ目として、in-kyo そしてTONARIで
やっていきたいこととは、こうしたことなのだと確認させてもらった
今回の展示。また機会をつくって深めていけたらと思う。

3月31日(日)晴れ 最高気温11℃最低気温1℃
雪の多かった3月も今日で終わり。明日から4月だなんてウソのよう。
そのこと自体がエイプリールフールだったらいいのに。
気分はまだ3月。気持ちが追いついていかない。