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表現するって

「もっと心を込めて!」
「大事な人を思い浮かべて!」
「好きな人に思いを伝えるように!」

音楽やってると、よく聞きますけど(特に部活での指導など)、これってなんなんでしょうね。

心を込めたり、大事な人を考えたら演奏が良くなる?
まあ、ステージの上で緊張しても、優しい気持ちで演奏したり、何かを伝えようと考えるだけでも音に違いが出ることは間違いないので、手っ取り早いイメージトレーニングにはなるのだけど。

でも、心を込めるためにその曲の意味とか背景、歌であれば歌詞の意味などをしっかり読み込んで来ているなら異論はないんだけど、本番が近付いたある日、いきなり指導者の口から「心を込めて」というワードが出てきて、それが

「「感情を強く出して→大きな音(声)になる→乱暴な音色・表現に」」

という残念な経過を辿ってしまうのを何度も目にしているので、やはり音楽的な指導をされる方には、「この曲はこういう音楽に作っていきたいから、皆さんは◯◯の情景、△△の場面を思い浮かべて演奏しましょう」とできるだけ具体的に指示していただきたいと思います。
ほんとね、本番直前に「この曲をやる意義は・・」みたいな精神論を持ち出してね、「みんなの気持ちがお客さんに伝わるよう、一人一人音に何かを込めなさい」なんて言われたって、それは乱暴な話だし、一人一人込める「何か」って何よって感じだし、「その何かを考えるのが皆さんの役割です」なんて冗談のようなことを真顔で言ってるし、ましてや、「曲に対する想いは人によって違うから、表現の仕方が違うのは仕方がない。でも、全員が表現しようとする姿勢が感動を生むのです」なんて根拠も何も根も葉も無い話をしているのを見ると、むず痒くなってしまいます。ふーんって声に出して言いたくなりますね。実際結構言うけど。ふーんって笑。

もちろん、「◯◯の情景、△△の場面を思い浮かべて」だけでは抽象的すぎるし、大まかすぎるので、引き続き曲の各場面での曲想にどう変化をつけていくかの作業を行う必要はあるのですけれども、少なくとも「何かを込めましょう」よりは進んだ指示・指導になると思いませんか??

また、曲への思いが強すぎて、濃い目の曲想がついてしまう場合がありますが、一方では演奏者の気持ちが伝わる内容ではあっても、それが白けて聞こえる場合もあるし、かといって、淡白すぎても面白味がないと思われるし、バランスが難しいところです。
僕が好きな浅岡雄也さんの言葉を借りると、自分の表現は「too much」にならないよう。曲を通して伝わる物はその人の受け取り方になってしまうので、全く同じにはならないけれど、それがしっかり伝わるように演奏していくことが大切です。

さて、自分の話になりますが、どちらかと言うと僕はあまり曲に入り込まないようにして、全体のバランスの中で「この音はこのくらいのボリュームと深さと硬さで、打鍵の速さや、音を上げるタイミングはこのくらいで」 など、イメージした曲想を出すために、音の出し方を変えていく方法で演奏を作っていきます。だから、感情にはほとんど左右されず、テクニック的に問題のない曲なら、いつもほぼ同じような演奏になります。

ただ、これは曲想をつけないということではなく、音の広がり具合、お客さんの反応、プログラム中のその曲の位置付け、共演者の様子、など、その日の会場の様子に合わせて弾き方を変えていくスタイルです。料理に例えるなら、下味は同じだけど、状況によって、トマトをたっぷり使ったイタリアンにしたり、ピリリと辛さのきいたカレー風味にしたり、お出汁がきいた和風にしたり。変幻自在に変えられるような準備を心がけています。

また、それは精神的な高まりにより初めて変化が現れるのではなく、精神的な高まりを表現するために、上述のように音の出し方を変えていく、といった方法であり(わかりづらい笑)、 一見、盛り上がって入り込んでいるように見えても、実はそれすらもそう見せているだけで、実際は常に冷静に何が起こってもすぐに対応できるように土台は崩さないスタンスを保ち続けているのです。見せ方もパフォーマンスのうちですから。

でも、アマチュアの演奏家に多くみられる、視覚的に見せようとして演奏がおざなりになってしまうのは、動きに気を取られて肝心の音楽がしっかり練られていないことになるので、それなら黙って演奏すればいいのにと思うことも少なくありません。やはり演奏があっての諸々だと思います。演奏力がないのをカバーしようと動きをつけるけれど、そもそも演奏の時点でリズムが揃ってないから動きはバラバラ、そして更に演奏は荒くなる。僕も誰かと演奏するときはそんなことにならないように、しっかり音楽を作っていきたいと思っています。

要は、本番にいきなり感動的な演奏ができるミラクルを願う前に、普段の練習の中で演奏の方向性を細かく思案しておくことで、もっと良い結果を得られる可能性は高まるのだから、時間を有効に、効率的に使って、しっかり準備しましょう!
ということで、今日の内容の総括になっているでしょうか??なってなくてもいいや!どなたか要約していただいても構いません笑

では、また明日!

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