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春上野先端芸術表現科かな

 第二十八回読売演劇大賞の授賞式は、二月二十五日に行われた。かなり限定された式典だったようで、勿論懇親会はない。私も少しばかり関係しているので、この式に配られた冊子が送られてきた。

 最優秀演出家賞は、藤田俊太郎が受けた。「天保一二年のシェイクスピア」「NINE」「VIOLET」の演出が受賞理由である。さまざまな困難はあったと聞いているが、大規模な三作品をこの一年に上演できただけでも幸運の持ち主だ。しかも、投票委員による支持を受けて、最優秀賞まで獲得してしまったのだから、幸運に実力も備わってきたのだろう。

 藤田俊太郎のプロフィールには、いつも必ず、東京芸術大学美術学部先端芸術表現科在学中の2004年、ニナガワ・スタジオに入るとの記述がある。先端芸術表現科の名前を出してくれるのは、藤田の母校に対する愛情の表れと受け取っている。

 卒業生の活躍はなによりうれしい。
 しかも、先端芸術表現科は狭義のファインアートの学科ではなく、現代美術の基礎教育を実技を含めて受けた人間が、社会へと進出し、さまざまな分野で活躍している。藤田は、その代表的な卒業生でもある。

 私は演劇の分野で活躍する人間をも応援してきた。これからも、同じような姿勢でありたい。もし、劇作家、演出家、スタッフ、俳優など演劇ジャンルに進みたいと考える高校生がいたら、ぜひ先端芸術表現科の受験を検討してもらいたいと思う。

 もっとも、藤田がニナガワ・スタジオに入った直後、私は蜷川さんに「シェイクスピアも満足に教えていません。申し訳ありません」と謝ったのを覚えている。

 先端芸術表現科は、自由な学科でありたい。発足から二十年を回って、「先端芸術表現科らしさ」が了解として生まれているのであれば、それも打ち破りたい。芸大出身者だけではなく、他大学の学部卒業生からの大学院進学も積極的に受け入れている。

 藤田のプロフィールをどこかで目にしたら、あ、そんな学科もあったなと思い出してもらえるととてもうれしい。

https://www.yomiuri.co.jp/culture/20210208-OYT8T50064/ 

年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。