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【劇評344】ナイロン100℃の『江戸時代の思い出』は、世界を黒く塗りつぶす。

 たたみかけるような悪夢が連続する。
 ひとつの悪い夢から覚めたかと思うと、また次の残酷とグロテスクが迫ってくる。
 ナイロン100℃三十周年記念公演の『江戸時代の思い出』(ケラリーノ・サンドロヴィッチ作・演出)は、シンプルなタイトルとは裏腹に、本質はシリアスなホラー劇の快作である。

 たしかに、スタイルとしては、達者で魅力的な役者を集めたナンセンス・コメディでもあるので、悪夢の連続は、観ているうちは意外に顕在化してこない。けれども、見終えて時間が経つうちに、笑いの要素は消えていき、絶望的な世界観が次第に立ち上ってくる。
 一見するとくだらないとも思えるが、一筋縄で読み解けるような作品ではない。私は観劇から一夜過ぎて重い物をずっしり手渡されたように思った。その晩の私の夢に、舞台の悪夢が侵入してきたのだった。

 この作品は、ふたつの時間軸を持つ。

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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。