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長谷部浩の俳優論。

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歌舞伎は、その成り立ちからして俳優論に傾きますが、これからは現代演劇でも、演出論や戯曲論にくわえて、俳優についても語ってみようと思っています。
劇作家よりも演出家よりも、俳優に興味のある方へ。
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2024年3月の記事一覧

【劇評330】ロンドンを恐怖につきおとすヤエル・ファーバー演出の『リア王』を観た。

【劇評330】ロンドンを恐怖につきおとすヤエル・ファーバー演出の『リア王』を観た。

 誰も愛さないリア王が、舞台に叩きつけられる。

 シェイクスピアの残酷なまでに孤独な悲劇を、ヤエル・ファーバーが演出した舞台が、アルメイダ劇場で上演されている。

 上手奥には、ぼろぼろになった地球儀が置かれている。装置のマール・ヘンセルは、この小道具と床の泥濘によって、私たちの住む惑星が、暴力と汚辱にまみれてきたと語っている。

 シンプルだが強い美術に立ち向かうのは、ダニー・サパーニのリアで

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