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長谷部浩のノート お芝居と劇評とその周辺

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2022年12月の記事一覧

【劇評288】東京キャラバンが帰ってきた。野田秀樹が仕掛けたケレンが炸裂する芸能者の祭典。

 2015年10月、「東京キャラバン」の公開ワークショップを、駒沢公園で観てから、ずいぶん時が過ぎた。七年といえば、結構な月日で、この間に起きた出来事を思い出すたびに、私たちは遠くまで来たのだと思う。  東京オリンピックは、悪夢のような思い出に成り果てた。コロナウィルスの脅威は、人類を相互不信のただなかに陥れた。ウクライナ侵攻は、不条理の意味を改めて考えさせられた。  今回、野田秀樹が企てた「東京キャラバンthe2nd」は、初演の面影を残しつつも、より肩の力が抜けた文化サ

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【劇評287】目に焼き付けておきたい玉三郎の揚巻。

 師走の襲名披露は、一年の締めくくり。しかも夜の部は、配役を一新した『助六由縁江戸桜』が出た。  今月が待ち遠しくてならなかったのは理由がある。先月、玉三郎の揚巻を観ることが出来なかったからである。  これはもちろん私の推測にすぎないけれども、玉三郎の揚巻は、これが最後になるのではないかという予感がある。衣裳が重いのは周知のことだ。藝域が頂点に達すると、揚巻のような体力的に厳しい役がむずかしくなる。私は、見納めのつもりで、歌舞伎座へ向かった。  私が観た日の配役は、團十

【劇評286】觀玄改め、八代目新之助の『毛抜』は、荒事の本質に届いていた。

 堀越勸玄は、ひとかどの役者へと進み始めた。  十二月の歌舞伎座は、八代目市川新之助襲名、初舞台の演目として歌舞伎十八番の内『毛抜』が選ばれた。新之助は、弱冠九歳。大らかな荒事ではあるし、家の藝とはいえ、役と本人にあまりにも落差があるのではないか。演目と配役が発表されたとき、危ぶむ声があがった。  現実の舞台を観て、いらぬ取り越し苦労だとわかった、新之助は、現在ある力を振り絞りこの役に取り組んでいる。その誠実さに胸を打たれた。  以前、故十代目坂東三津五郎の聞書きをした。

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