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長谷部浩のノート お芝居と劇評とその周辺

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2021年12月の記事一覧

紀伊國屋演劇賞。審査はあくまでサロン的に。

 紀伊國屋演劇賞の選考に関わるようになったのは、1999年のことだから、すでに20年余りが過ぎた。  演劇賞の看板は、これまでの受賞者リストである。  もちろん、さまざまな演劇賞と関わってきたが、この紀伊國屋ほど看板に自信があり、また受賞者も誇りに思う賞は少ないだろうと思う。  1999年は平成十一年。紀伊國屋演劇賞にとっては、第三十四回にあたる。受賞者は、団体賞が木山事務所。個人賞が、岸田今日子、堀尾幸男、野田秀樹、宮本裕子、市川染五郎となっている。遠い昔のような気もす

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【劇評245】菊之助、勘九郎。哀惜こもる『ぢいさんばあさん』。

 目を瞠らせるスペクタクルばかりが歌舞伎ではない。  台詞を大切にした世話物が観たいと思っていたところ、十二月大歌舞伎の第二部に、『ぢいさんばあさん』を見つけて嬉しくなった。  森鴎外の原作、宇野信夫の作・演出だけれども、さすがに芝居巧者の宇野信夫だけあって、ある意味では荒唐無稽な話でありながら、観客の涙を誘う仕立てになっている。役者にとっては、宇野が作った虚構を、いかに活き活きと見せるかが課題となる。  まずは、若き日の美濃部伊織(勘九郎)とるん(菊之助)の初々しい若夫

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十八代目中村勘三郎のアナザーストリーズが、NHKBSプレミアムで放映されます。

「そのとき歌舞伎は世界を席巻した十八代目中村勘三郎の挑戦」が、12月7日午後九時からNHK BS プレミアムで放送されます。  芸能番組ではなく、本格的なドキュメンタリー番組なので、これまでの勘三郎追悼番組とは、違ったものになってるのではないかと期待しています。 玉三郎、野田秀樹らの出演です。もちろん勘九郎、七之助も出ます。 勘三郎ファンは必見です。私も取材を受けました。 https://www.nhk.jp/p/anotherstories/ts/VWRZ1WWNYP/s

【劇評244】猿之助の可能性はどこにあるのか。

 もう師走か。  十二月大歌舞伎を観るために歌舞伎座に向かったのは、四日。このところ暖かい日が続いているから、寒さに怯える心配はない。  注目の第一部は、『新版 伊達の十役』(補綴・演出石川耕士)。新版と小さく書かれていて、作は鶴屋南北となっているが、実際に上演されたのは、『伽羅先代萩』の「御殿」と「床下」。休憩を挟んで、『獨道五十三驛』の所作事を『写書東驛路』を『伽羅先代萩』の世界に仕立て直して『聞書東路不器用』としている。  本来ならば、名題を二本立てて上演するのが筋

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【追悼】二代目中村吉右衛門の夢

 悔いはないといえば、悔いはない。  悔いがあるといえば、悔いがある。  死は、だれにも等しく訪れると知ってはいても、残された人間に混乱をもたらす。  悔いがないのは、私が自覚的に歌舞伎を観始めた一九七五年から、二○二一年三月の『楼門五三桐』まで、四十五年近い歳月の舞台が、例外なくすぐれていたからである。  初代白鸚の次男として生まれ、祖父、初代吉右衛門の膝下で育てられた。その幼年時代の苦しみについては、本人が自伝で繰り返し語っている。  初代吉右衛門の一代で築いた藝を

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