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仁左衛門と玉三郎の永遠。

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歌舞伎を長年のあいだ支えてきた片岡仁左衛門と坂東玉三郎の舞台を集めたマガジンです。ふたりが競演した『桜姫東文章』はじめ、近年の作品について書いた劇評を網羅しています。永遠の二枚目…
仁左衛門と玉三郎の舞台を、永遠に見たい。そんな気持でマガジンを作りました。
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#女方

【劇評218】南北、郡司学、仁左衛門、玉三郎、奇跡の巡り会い、ふたたび。

 歌舞伎では、一座を代表する女方を、畏敬もって立女方(たておやま ルビ)と呼ぶ。  六代目歌右衛門、七代目梅幸、四代目雀右衛門、七代目芝翫は、歌舞伎座の立女方にふさわしい威光を放っていた。玉三郎は、歌舞伎座のさよなら公演のあたりから、その名に、ふさわしい存在だと私は思っていた。  詳しい事情はわからないけれども、いつの間にか、特別舞踊公演などの独自の公演が増え、重い演目の役を勤める機会が少なくなっていった。歌舞伎の世界にとって、このような動向は、とても残念なことだと思って

¥100

【劇評263】語りと身体。『ふるあめりかに袖はぬらさじ』に観る玉三郎の至芸

 大女優の仕事を女方が引き継ぐ。  杉村春子のような大女優の当り役は、後継者探しがむずかしい。杉村が牽引してきた文学座にとって、なにより大切な『華々しき一族』や『女の一生』についても、杉村が唯一無二の存在であっただけに、後を引き継ぐ女優は、困難に立ち向かわなければならなかった。  杉村がまだ存命のうちに、坂東玉三郎は『ふるあめりかに袖はぬらさじ』(有吉左和子作)を新派に客演するかたちで手がけている。  私が観たのは、平成元年五月、新橋演舞場の舞台で、なるほど玉三郎ほどの傑

¥300