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仁左衛門と玉三郎の永遠。

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歌舞伎を長年のあいだ支えてきた片岡仁左衛門と坂東玉三郎の舞台を集めたマガジンです。ふたりが競演した『桜姫東文章』はじめ、近年の作品について書いた劇評を網羅しています。永遠の二枚目…
仁左衛門と玉三郎の舞台を、永遠に見たい。そんな気持でマガジンを作りました。
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#義経千本桜

【劇評305】仁左衛門、渾身の「すし屋」。目に焼き付けたい舞台となった。

 六月大歌舞伎夜の部、初日。  自由闊達な『義経千本桜』を観た。  仁左衛門が芯となって目をとどかせるのは「木の実」「小金吾討死」「すし屋」。型を意識しつつ、とらわれすぎない仁左衛門の境地にうなった。  「木の実」は、平維盛の行方を捜す妻の若葉の内侍(孝太郎)とその子六代君(種太郎)とお供を勤める家臣の小金吾(千之助)が、下市村の茶店で休んでいる。六代君の腹痛を起こしたため、茶屋の女実は権太の女房小せん(吉弥)に薬を求める。村はずれで身体を休ませる一行の哀しさ、旅の疲れを

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【劇評249】仁左衛門の知盛。一世一代の哀しみ。

 仁左衛門が一世一代で『義経千本桜』の「渡海屋」「大物浦」を勤めた。  確か、仁左衛門は、『絵本合法衢』と『女殺油地獄』も、これきりで生涯演じないとする「一世一代」として上演している。まだまだ惜しいと思うが、役者にしかわからない辛さ、苦しさもあるのだろう。余力を残して、精一杯の舞台を観客の記憶に刻みたい、そんな思いが伝わってきた。  さて、二月大歌舞伎、第二部は、『春調娘七草』で幕を開けた。梅枝の曾我十郎、千之助の静御前、萬太郎の曾我五郎の配役で、いずれも初々しく、春の訪

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