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天下無双、漢、海老蔵

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市川海老蔵が、不当な非難を受けていることを、残念に思います。役者は舞台がすべてです。海老蔵について書いた劇評を集めました。野性、暴力性、破天荒が評価されてきた海老蔵に、市民社会の…
年末に團十郎襲名を控えていると噂される海老蔵を応援するマガジンです。
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#初舞台

【劇評301】歌舞伎役者の一員として責任を果たす。初代尾上眞秀の初舞台。

 上演年表を眺めて飽きることがない。  もっとも手軽なのは、歌舞伎座の筋書で、戦後ではあるにしても、上演年月、配役、備考、上演時間がコンパクトにまとまっている。幕間に、年表を眺め、自分が観てきた舞台を思い出すのは、歌舞伎見物の楽しみだと思う。  團菊祭五月大歌舞伎。昨年の團十郎襲名によって、十五年振りに團十郎、菊五郎が同じ舞台に乗る。今を盛りの松禄、團十郎、菊之助に、大立者たちがからんで大顔合わせとなるのが期待された。  まずは、『対面』。こうした定型の役柄の複雑な組み

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【劇評286】觀玄改め、八代目新之助の『毛抜』は、荒事の本質に届いていた。

 堀越勸玄は、ひとかどの役者へと進み始めた。  十二月の歌舞伎座は、八代目市川新之助襲名、初舞台の演目として歌舞伎十八番の内『毛抜』が選ばれた。新之助は、弱冠九歳。大らかな荒事ではあるし、家の藝とはいえ、役と本人にあまりにも落差があるのではないか。演目と配役が発表されたとき、危ぶむ声があがった。  現実の舞台を観て、いらぬ取り越し苦労だとわかった、新之助は、現在ある力を振り絞りこの役に取り組んでいる。その誠実さに胸を打たれた。  以前、故十代目坂東三津五郎の聞書きをした。

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