【6年前】大学時代に書いた自分の考えに驚く


以下は、私が20歳の時にゼミの課題で提出したレポートである。

このときからウェルビーイングを大切にしているのだから、なんだかいまヨガ講師になっているのは必然なのかもしれない。

そして
"ありがとう"と"ごめんなさい"が素直に言える人間であり続けたいと今もこうして思える
そんなレポートを書いてくれた過去の自分に感謝の意を込めて。


はじめに

 私が興味を持っているテーマ、そしてリサーチクエスチョンとしてとりあげるものは、「なぜ『ありがとう』という感謝感情を素直に表現できる人は人間関係を良好に構築することができるのか」である。

なぜこのリサーチクエスチョンを設定したのかというと、私は小さいころからずっと、今もなお両親から「『ありがとう』を素直に言える人になりなさい」とよく言われて過ごしてきた。小さい頃はその言葉の意味をよく理解していなかったが、ひとりの成人として、また大学で学校生活を送っている自分にとって、この教えは人間関係を築いていく際に非常に重要であると考えることができるためである。

なぜなら、学校生活を含め、私生活をより楽しく有意義に過ごすためには自分一人だけの世界の中で、自分の意見と価値観のみで生活していくことよりも、自分とは違う他人の世界や価値観を知り、それらを受け入れていくことによって、自分にとっても相手にとっても視野が広がると考えられる。それらは自分の成長や、様々な感情を共有することにつながるのではないだろうか。そのため、自分一人の価値観に凝り固まって生きていくよりも他者とのコミュニケーションは人生において非常に重要であり、より豊かな生活を送ることができるのではないかと考えられるからである。

また、逆に考えてみると、「ありがとう」という感謝感情を素直に表現できない人は人間関係が良好に築くことはできないのだろうか。林は、「お世話になったという気持ちがあれば、それは自然と言葉となって現れてくることであろう。しかし、『ありがとう』という言葉を口にすべき状況だということに気づかない子どももいるし、その言葉を発することに気恥ずかしさを感じる子どももいる。」 [林泰成, 2012]と述べている。

このことから、「ありがとう」と相手に対して素直に言えない子どももいるということも事実であり、この状態が大人になってもなお残ってしまったら、人間関係を構築していく際に相手に不快の感情を与えてしまうことがあるケースも考えられ、人間関係の構築をしていく際に、スムーズにはいかないのではないかと考えられる。

したがって、自分の人生を歩んでいく中で多くの、そしてさまざまな人とともに生きていくことを考えてみると、相手に快い・気持ちがいい思いをしてもらうための気づかいや感謝は必要不可欠であることは確かである。心の中で思いを馳せるだけではなく、口に出して「ありがとう」という感謝感情を素直に表現することが人間関係を良好に築くことができることに繋がるのではないだろうかと考えた。


先行研究の整理

 「感謝は,主に対人関係で体験される感情であるとともに感謝を抱いた相手への表出や返礼行為を伴うことが多い。」 [岩﨑 眞和・五十嵐透子, 2016]、「悩んでいた時に友人に相談にのってもらったときや、思いがけずプレゼントをもらったとき,何かを達成したときなどわれわれは日常生活のさまざまな場面で感謝を感じる。また,そのとき生じる感情体験は、うれしいものであったり申し訳ないものであったりとさまざまである。」 [蔵永 瞳・樋口匡貴, 2012]」、「そして,この“感謝”という感情は,しばしば他者に対して表出される。感謝の表出形態については,たとえば,笑顔をうかべる,ありがとう等とお礼の言葉を述べるといったものがある」 [蔵永 瞳・樋口 匡貴・福田 哲也, 2016]

これらの議論から、まず「感謝」とは主として自分一人の行動の中で生まれ、表出するものではなく、他者とのコミュニケーションによって感謝感情は生まれるものである。そして自分に対して感謝感情は表出されるのではなく、他者からの何らかの行為に対して返礼行為などを伴って表出されるものだと分かった。このことから感謝感情は他者との関わり・コミュニケーションが必須であり、これらはすべて人間関係の構築につながるものと考えることができる。

「日常生活の中で,他者に感謝することがある。他者からのその言葉に嬉しくなる。このように日常生活において,感謝(gratitude)はポジティブな感情と密接に関わっていると考えられる。21世紀に入ってからアメリカ合衆国でポジティブ心理学(positive psychology)が興隆し,それに伴い感謝について研究がなされて進められているが,これは感謝が,基本的に肯定的で望ましいものとして捉えられている表れといえるだろう。」 [花井菜月・月元敬・宮本正一, 2014]

この議論からも、「感謝」という感情表現は他者からもたらされた感謝感情を自分の中で受け入れ、そしてその感情が他者に対して表出されるものであることが分かった。また、感謝感情には「ありがとう」だけではなく、「すまなさ」という感情も持ち合わせていることも分かった。そして、自分が他者に対して感謝感情を表現し表出するとき、自己のポジティブな感情と密接に関わっていることも分かった。

花井・月元・宮本の研究では、感謝の介入によって自尊感情や主観的幸福感「(well-being):ポジティブな感情や、家族・仕事など特定の領域に対する満足感や人生全般に対する満足感を含む広域な概念を指すもの。 [川浦康至, 2003]」が高まりを示すのかどうか、および感謝特性の低い(感謝の気持ちを抱きにくい)人が感謝介入によって自尊感情や主観的幸福感の高まりを示すかどうかを検討した。 [花井菜月・月元敬・宮本正一, 2014]

これらの検討の結果、この研究では自尊感情および主観的幸福感に対する感謝を心がけさせる介入の正の効果がみられた。すなわち、感謝することが自尊感情および主観的幸福感を高めるということ、そして主観的幸福感に対する感謝を心がけさせる介入の効果は、普段感謝の気持ちを比較的抱かない人ほど大きいものであることも示された。

 以上の先行研究の整理から私は、感謝をする人は「主観的幸福感が高い」ということを導き出すことができた。



仮説

 以上の先行研究の整理とこれらから得た結果から、私は、「ありがとう」という感謝感情を相手に素直に表現し伝えることができる人は、自分自身の中で快の感情を素直に受け入れることができていると考える。また、自分が与えた、そして相手から受け取った感謝感情を他者と共有しようと思うために、感謝感情を与える・受け取るという形が自分の中で当たり前・日常的な行動となるため、それが自己の主観的幸福感の高まりにもつながり、人間関係の良好な構築にも関係しているのではないだろうか。

そこで私は、リサーチクエスチョン「なぜ『ありがとう』という感謝感情を素直に表現できる人は人間関係を良好に構築することができるのか」に対して、「主観的幸福感の高い行為である感謝すること〈A〉を日常的に他者に表出できるため、それが人間関係の良好な構築につながる〈B〉のではないか」という仮説を立てた。


検証

 私はリサーチクエスチョン「なぜ『ありがとう』という感謝感情を素直に表現できる人は人間関係を良好に構築することができるのか」に対して、「主観的幸福感の高い行為である感謝すること〈A〉を日常的に他者に表出できるため、それが人間関係の良好な構築につながる〈B〉のではないか」という仮説をたてた。ここでは先行研究の整理から得られた「感謝することによって主観的幸福感が高まる」(仮説では主観的幸福感の高い行為である感謝すること)を〈A〉とし、そして人間関係の良好な構築につながることを〈B〉とした。

そこで、この「A=Bが成立するか」、すなわち主観的幸福感の高い行為である感謝と人間関係を良好にすることに関連性があるかどうかを検証することとした。

今回簡単ではあるが、ソーシャルネットワークサービスのTwitterのアンケート機能を利用して調査を行った。感謝感情は主観的幸福感を高めることを前提とし、「『ありがとう』という感謝感情を日常的に表出できることは人間関係を良好に構築できることに関連性はあると思いますか?」という問いを立てた。回答の選択肢は①両者には関連性がある、②両者には関連性はない、③その他(意見等)とした。

24時間限定でのアンケート調査ではあったが、最終的に1044という回答数が得られた。結果としては①が84%、②が14%、③が2%となった(下図参照)。この結果から私は主観的幸福感の高い行為である感謝と人間関係を良好にすることに関連性があるとし、自分の立てた「主観的幸福感の高い行為である感謝すること〈A〉を日常的に他者に表出できるため、それが人間関係の良好な構築につながる〈B〉のではないか」という仮説は立証可能とした。




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