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サッカーにおける注意-どのようにを見るか




欧州のフットボールシーンを誰もが、いつでも観られる時代になった。これは日本のフットボーラーにとって歓迎すべきことである。


日本のフットボールシーンの根本はスポーツ少年団にある。これを支えているのは父兄のボランティアコーチ達である。


いつからだろうか。このボランティアコーチ達の質を求められるようになったのは。私達は、この存在無くしてフットボールの面白さを知ることは出来ただろうか。誰もが出来るスポーツとして定着しただろうか。何故、フットボールの面白さを伝えてくれた方々が非難される現状になっているのか。仕事として、プロフェッショナルとして指導している訳ではないかもしれない。それでも週末の自分の時間を使って、情熱、愛情を持って子供達に指導している。私にとって、現状の世間の目は受け入れがたい。少しでも子供達に楽しみ、喜び、悔しさ、仲間と共にする素晴らしさを伝えたいと汗を書いている指導者の方にとって、新たな視点を届けることが出来ればと思い、本稿の執筆をする。



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フットボールにおいて視ることの重要性は増している。これはフットボールに限らず、日本の社会において自ら決断する能力を有する人物が評価されるようになっている。その文化の浸透により、決断に至るプロセスについて仮説、検証が行われるようになっている。決断するプロセスとは認知、分析、判断、実行のことであり、この中の認知について議論されることが多い。しかし、認知に関する知見は少なく、少ない情報化や誤った認識で議論されいる。これは危惧すべき状況である。


認知とは運動により身体を介して事象を知るプロセスであり、環境世界に意味を与えるプロセスと捉えられる。すなわち、全ての運動に認知が含まれる。例えば、対面パスやコーンドリブルなどは認知が含まれていないとされるが、実際には認知が含まれる。トレーニングの継続により運動学習され、自動化された運動になる。そして、無意識下で出来るようになることが問題定義されているが、運動学習初期では重要視されるべきトレーニングである。選手達の成熟度によって変化されるべきものであるが、イニエスタが認知に優れているとされるのは、安定したボールコントロールにより周囲を見渡せる余裕があるのは周知の事実である。イニエスタほどのボールコントロールが選手達に出来ているのかの視点で捉えると面白く、難易度を変更したドリルは有効だと示唆できる。

「認知とは、環境世界に意味を与えるプロセスである。それは生物が外界にある対象を知覚した上で、それが何であるかを判断したり、解釈したりすることであり、前述した知覚情報処理(感覚器官を通して外界や身体内部に関する刺激を受容し、中枢神経において刺激に関する情報を知りしていく過程)に基づいて、過去の自分自身の経験に基づく記憶に照らし合わせ判断するプロセスを指し、それには知覚、注意、記憶、表象、象徴、言語、そして判断といった高次脳機能が統合的に関与する。これらの高次脳機能を動員し、身体を介して「知ること」が認知である。」(樋口貴広、森岡周 著 身体運動学 知覚・認知からのメッセージ 三輪書店 2008)


サッカーはオープンスポーツである。スキルにおいては「限りなく無意識に近い、意識下で行うスポーツ」と考えられる。つまり、ボールを操作することは限りなく無意識化で行い、周囲の状況を把握し、推論を行うことに意識の重きを置くべきである。ボールを操作することを成熟度が、認知力の向上に寄与する。私たち指導者はどのようなプロセスで選手のパフォーマンスを向上させるか思案しなければならない。本稿では認知の前提である注意をフューチャーし取り上げる。



サッカーにおける認知のスピードとは何か。


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認知についての議論がされているのは、サッカーのプレースピードが向上していることが理由として考えられる。スピードが向上することはフィールドで抽出される情報量が増え、処理する能力が求められる。イニエスタやブスケツ、デブライネのような現在のスター選手達が有している能力もそのスピードに適応した処理能力である。そして、情報処理から適切なプレーを選択できることが試合を優位に進めるポイントであり、選手間の相互作用としてチームで求められる。


サッカーにおけるアクション・リアクションスピードとは何か。


チームでのスピードと個人(プレーヤ)でのスピードに分けられる。これが曖昧な表現になるが、個人スピードの総和がチームスピードとなり、ゲームスピードと表現できる。プレーヤーが認知することは非常に多く、ゲーム、チーム、自分の状態まで幅広く認知することが求められるとされるが、実行系に映る際に要求されることはチームがゲームを優位に進めることが出来る判断を要求される。適切な実行をする際にどのような視点で視ることをすれば良いのか。これが視るためのバックグラウンドとして必要である。


視ること-ボールウォッチャーって何か-


視覚情報を得ること。サッカーで視ることは能動的に視ることを指す。しかし、ボールウォッチャーという言葉が存在する。視ることでパフォーマンスを低下させることがある。どのように視るかとの視点が必要になる。能動的と受動的な見方があり、より能動的に視ることがネガティヴに働くことを知る必要がある。注意深く視ることが与える因子や俯瞰的に視ることの因子について議論されることは少ない。そして視たものをどのように捉えるか知らなければ、選手とプレーについて対話することは時に困難となる。



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