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回旋系伸張反射の極意。変態チアゴターンを考察する。



タッチシーンだけでこれだけのMOVEを作成出来るのはそれだけ魅了されているフットボールファンがいる証拠である。それだけでなくUCL優勝の立役者であり、バイエルン・ミューヘンの主軸を担うプレーヤーであることは疑いもない事実である。鬼才チアゴ・アルカンタラのターンについて紐解いていく。



まず、チアゴターンを図解したものを下記に示す。

ターン.001

ターン.002

これらはボールタッチ以前とボールタッチ以後のフェイズを分けたものである。驚くべきはボールタッチ以前に足部を反対方向に動かしているのがチアゴタッチの特徴である。これにはどの様な意味づけと機能的な特徴があるのか。


ボールを正確に触るためのノウハウ:下腿を自由にする。


予測的姿勢.003

ボールを触るためには足をボールに近づける必要がある。末端をボールに近づけると爪先のコントロールとなり自由に下半身を動かすことは困難となる。ここには神経支配によるシステムが介在する。

予測的姿勢.001

四肢の支配神経:皮質脊髄路
体幹・近位四肢の支配神経:網様体脊髄路

これらはプレーに応じて微調整されるが、足先をコントロールしようとすると自由に動かすことが難しくなる理由である。初心者の方がリフティングすると足が棒の様になりコントロールが難しくなるのもこのためである。

予測的姿勢.002

もう一つの視点が存在する。予測的姿勢制御(anticipatory postural adjustment;APAS)である。

予測的姿勢制御(anticipatory postural adjustment;APAS)

予測的姿勢制御についてはBelen7'kiiとGurfinkelの研究が有名である。彼らは静止立位で一側の手を随意的に素早く前方に挙上すると、肩の三角筋の収縮に先行して同側の大腿二頭筋(ハムストリングス)と対側の体幹筋が収縮することを発見した。

腕の前方移動に対応した身体の前方への重心移動を固定する筋収縮がある発見である。腕の運動に伴う前方移動を予め予測して下肢や体幹を固定し、重心移動の少ない安定した立位姿勢を保持することである。

ターン2.001

Hogresらは立位で下肢の一側の股関節を空中で屈曲、外転、伸展した時の体幹筋を分析した研究では、股関節の運動方向別に先行して腹横筋、内腹斜筋、外腹斜筋、腰多裂筋などの収縮が認められている。その中で、腹横筋は運動方向に関係なく常に先行収縮する。つまり、腹横筋は重心移動を予測して、腹圧を高めることによって立位の揺れを最小限にしている。これは呼気ではより強まることが分かっており、呼吸のコントロールも必要とされる。

近年では予測的姿勢制御が様々な研究によってあらゆるスポーツシーンで生じることが分かっている。またGibsonの知覚理論(アフォーダンス)に基づく「視覚のオプティカルフロー(前方に移動していくときの風景の後方への連続的な流れ」における姿勢調整メカニズムにも注目されている。

トラップのために足を動かすことは、身体を傾けることで容易になる。そのためには身体を傾ける経験が必要不可欠となる。そしてその運動の際に呼吸を連動させることが重心をスムーズに移行するために重要である



チアゴターンの加速の極意:回旋系伸張反射

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