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兄への手紙〜春の月のひと〜

私には、3歳年上の兄がいる。小さい頃は本当に仲が良かった。いつも一緒で家の中では二人で、外では近所の子供たちと朝から晩まで、裸足で泥だらけで遊んでいた。

喧嘩もたくさんした。私が勝てることはまずなかった。よくやられたのは、大根の千切り攻撃というやつだった。背中をチョップしまくる拷問のような攻撃に私はその度に母に泣きついたものだ。

母の入院が決まるたびに泣きべそをかいていた私だったが、兄が泣いたことは一度もなかった。きっと、寂しさを感じていても、妹の前でなくわけにはいかないという男としての兄としてのプライドがあったのだと思う。

成長するにつれ、私たちは顔が似ていないと言われるようになっていった。小学校3年生の時、兄と二人でテーマパークで二人乗り自転車に乗っていた時、小学生の男子たちに『ヒューヒュー!デートかよー!』と冷やかされたこともある。今でも、二人で出かけるとよく夫婦に間違われる。


そんな兄は、丁卯(ひのとう)。イメージは春の月だ。桜が少しずつ散りだす頃の柔らかい春の月だ。


丁の人は優しい。特に、丁の男の人は優しくて繊細だ。兄もまさしく、丁の気質そのものだ。無口で、何を考えているのかわからなくて、大人になってからは兄のことがよくわからず、どう接していいかわからないことが多かった。兄は日柱の干支も第二宿命も丁。だからなのか、丁要素が強いと感じる。

丁の人には秘める気質がある。月が静かに空から私たちを見守るように、多くを語らない。人に認めてもらわなくても、自分の優しさや思いやりを人に与えられる人だ。このことを実感した出来事がある。

脳出血の後遺症で、歩くことが不自由になった父。私と母は、時に手を貸して歩くことをサポートしたり、タクシーを使っても極力歩く距離が短い方を選択しがちだった。でも、兄は違った。食事や買い物に行っても、わざと入り口から遠いところに駐車することがあった。そこには、兄なりの優しさがあった。少しでも歩くことで父の筋力を衰えさせないためだった。



頭が良くて自分のことをよくわかっていた兄は、現役で進路を決め、就職氷河期だった時代でもなんなく、先を読んでいたかのように、今必要不可欠なITの職場に就職した。兄が持つ、偏印と比肩が、突き動かしたのだと思う。かれこれ、20年近くずっと勤めている。それは兄の正財がきいているんだろう。コツコツと、努力を積み重ねる真面目な性格は正財の強みだ。主星が正財の兄らしい仕事の仕方だと思う。


少し前に、実家に帰った時だった。家の整理をしていて、兄が小学生の頃に書いた作文が出てきた。色褪せた作文用紙に、几帳面な兄の字で書かれたお題は、『僕の妹』。兄の目線で書かれた日常の私の様子。

『妹は急にプンプン怒り始める。僕が何か怒らせることをしたのか?僕はたまに妹のことがよくわからなくなる。でも、僕の妹はとても可愛い。寝顔もとても可愛いのだ。』

そこには、兄の妹の私に対する愛情が溢れていた。小学生の兄がこの作文を書いている姿を想像すると、何だか胸が熱くなった。

兄の優しさはずっと変わらない。それは私が兄の妹としてこの世に産まれた時から。実家をでていったのは、私が先だった。兄はその後、私よりは実家に近い場所に引っ越した。私が旅立つのを見届けてから。私はそう感じた。それが兄の優しさだ。

兄の持つ正財・沐浴の星の組み合わせは、沐浴の自由を愛し束縛を嫌う力が強まり、本来、男性にとって妻や結婚を表す正財の要素を弱めると言われている。だから兄には結婚願望というものがないようだ。でも、いいご縁があればしたらいいんだ。

引っ越しは私が先だったけど、私の嫁入りを待たなくていいんだよと言いたい。


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