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潮目の変化 〜 外部環境の好転と資金調達

伊豆新島へのセーリングと黒潮


今年のゴールデンウィークは、とても天気も良く、風や黒潮の流れも味方して、伊豆新島までヨットで2泊3日で行ってきた(横浜→伊豆大島→伊豆新島→横浜)。

伊豆大島を越えて南下するには、黒潮の影響を避けて通れない。1年を通じて、黒潮は伊豆大島のあたりで凡そ2~3ノットで流れている。

僕たちのヨットは、着水から40年近く経っているお婆ちゃん艇でエンジンもヤンマーの1Gという最も非力な部類に入るものだ。船艇塗装をしっかりした状態(船の船艇には夏場に牡蠣や藻が付着するので船艇をきれいにしていないと船速が著しく落ちる)でせいぜい4~5ノットが最高速度だ。つまり、海流が2~3ノットで流れている地域では風向きが悪ければ全く前進できないということになってしまう。

今年のゴールデンウィークの5月3日は、通常はよく伊豆大島の北側を流れている黒潮が南下しており、黒潮の大きな影響を受けずに伊豆大島の波浮港まで入港できたのだ。5月5日の帰路では、逆に黒潮の流れにも助けられ、風も南から吹き続けてくれたので、70マイルの距離を1日(12時間)セーリングして、伊豆新島から横浜ベイサイドマリーナまで戻ってくることができた(朝4時に出港して夕方4時に帰港。トップ画像はその時の新島出港直後の景色)。

ヨットに乗っていると、天気のみならず、風、波、潮と考慮する要素も多いが、その分自然を強く身近に感じられるのが良い。

外部環境の好転

昨年は、Natureを取り巻く事業環境でも潮目が変わるような大きな変化があった。

それは、これまで議論されてきてたものの、見通しがたっていなかった低圧リソースの調整力市場への参入が2026年から実現できる目処が立ったのだ。低圧リソースというのは、簡単に言ってしまえば家庭内のリソースで、家庭の蓄電池、EV、エコキュート、エネファーム、エアコン(これらをまとめてDERs:Distributed Energy Resroucesと呼ばれている)あたりが対象となる。

また、2024年度からは、容量市場が開場した。これによって、電気の利用者も自分自身が電気を使う最大電力量に応じた容量拠出金を支払うことになった(電気料金プラン次第で電力小売事業者がそのコストを吸収する場合もある)。

つまり、これは裏を返せば、ピークの電力量を抑えることができれば、電気代金を削減できることになるのだ。容量拠出金の単価は毎年変わるが、だいたい数千円/kw程度(5千円/kw前後)。仮に5千円/kwとしても、ピークの需要を1kw削減できると、年間で5,000円の電気代削減となる。

これらがどうしてそこまで重要な話なのか、カーボンニュートラルの文脈から紐解いて解説していきたい。

カーボンニュートラルと調整力

カーボンニュートラルとは、ご存じの方も多いと思うが、温室効果ガスの排出を全体としてゼロとするというものだ。温室効果ガスの排出自体をゼロにしなくても、排出量と吸収量を均衡させることでも良い。

今の地球環境を守るには、2050年までのカーボンニュートラルは必達の課題なのだ。そのためには、2030年には温室効果ガスの排出量を半減させる必要がある。

では、何が温室効果ガスを排出しているのか、と考えると、一言で言うと電気だ。今、すでに電気として排出されているものに、今後急速に電化が進むと考えられる移動や冷暖房までを加えると半分近くが電気による排出になる(多少乱暴だが、大意を見失わず、議論を簡単にするために分かりやすい数字を使っているとご理解いただきたい)。

つまり、電気を脱炭素化することが最も重要なテーマになる。そこで出てくるのが再生可能エネルギーだ。再生可能エネルギーの発電ソースも多種多様だが、現実的に向こう25年間で大幅に増やすことが可能なリソースとなると、太陽光と風力になる。故に、2050年までのカーボンニュートラルを目指している世界各国のその時点での電力のエネルギーミックス(発電ソース毎の割合)を見ると、半分以上が再生可能エネルギーであり、そのうちの現時点との差分のほとんどが太陽光と風力によって埋められることになっている。

IEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関)のWorld Energy Outlook 2022でNZE(Net Zero Emissions:排出ネットゼロ)へのシナリオにおける電源種別の構成推移を見ていただければそれが非常に良く分かる。

「IEA World Energy Outlook 2022」のP138からの抜粋

では、これだけ大きな電源構成の変化が起きた時に何か付随して課題になることはないのか。

もちろん新たな課題がある。

それは、これだけ大きな変動性の高い再生可能エネルギーを受け入れるためには、それだけ大きな調整力が必要になる。これは、電気とは同時同量の原則があり、発電側と需要側の量を常に均衡に保たないといけない。これをしないと交流で送電している電気の周波数が乱れ、ブラックアウトを起こしてしまうからだ。

つまり、再生可能エネルギーを2050年までに増やすということと、調整力を増やすということはセットで考える必要がある。

調整力として期待されるDERs

では、どうやって大量の調整力を今後増やしていくのか。

調整力をこれから大きく増やすには、蓄電池とデマンドレスポンス(顧客側の需要を上げ下げすることでその能力を調整力として活用するもの)を向こう30年間で劇的に増やしていく必要がある。IEAの試算によると、2020年には調整力の約数%程度にしかならない蓄電池とデマンドレスポンスを、2050年には調整力の50%を超える水準まで増やす必要があるというものだ。

また、これは経産省に対してNRIが提出したレポートの抜粋になるが、調整力のポテンシャルのうちで家庭のリソースポテンシャルは全体の7割近くと算出されている。

このような背景から、家庭用のエネルギーリソース(DERs)が調整力として大きく期待されており、その門戸が遂に開かれたと言うのは潮目が変わるようなとても大きな転換点なのだ。

資金調達とDERプラットフォーム

前述したような環境変化もあり、国内でも再生可能エネルギーやそれに関連する事業に関心を持つ事業会社の動きが一気に加速した。

その最たる例が、関東圏内ではお馴染みのCMとなるつつある、東京ガスのIGNITURE蓄電池の動きだ。

Natureでは、このIGNITUREサービスを技術サポートさせていただいている。

この流れの中で、Natureは、2024年2月に東京ガス、環境エネルギー投資、KDDI Green Fund、ダイキン、ENEOS、博報堂DYI、三菱UFJキャピタル、横浜キャピタルから合計で10.2億円を調達し、今だにまだ新規投資家からのコンタクトが続いている。

これまでの電力撤退後の2年間(正確には、電力小売事業参入前から)温め続けてきたNatureのエネルギーマネージメント事業での取り組みがようやく花開きつつある。

Natureでは、2019年12月にスマートHEMS「Nature Remo E」を発売し、着々と接続できるエネルギーリソースを増やしてきた。また、最近ではNature Greenという有償サービスの提供を開始し、「電気を賢く使い
人と地球に優しい暮らしを。」をスローガンに自動制御の機能を強化してきた。

そして、今、Natureでは、これまで培ってきた実績やノウハウを昇華させて、Natureのプロダクトやメーカークラウドを連携させ、DERsを最適制御するエネルギーマネジメントプラットフォーム「Nature DER Platform」の構築を進めている。

また、これまでは自社ブランドをベースにしたサービス提供が主体だったが、パートナー企業からの要望や要件次第にはなるが、ホワイトラベルでのサービス提供の始めた。

年内でもまだまだ大きな発表が控えているのでぜひ期待してほしい。

"I"ではなく"We"

僕は2年前からトライアスロンを始めて、そのトレーニングに毎日1時間程度使っている。その時間を効率的に利用し、英語の耳を錆び付かせないという目的で、ランニングする時にTedTalkやNatureのポッドキャスト(英語)を聴いている。

その中でも、最近とても面白かったのが、生物学者のKathleen McAuliffeさんの「Do gut microbe control your personality?(腸内細菌が人格を支配しているのか?)」というテーマでのスピーチだ。彼女はそのスピーチの最後に、「The person you call I is really we.(あなたが "私 "と呼ぶ人物は、実は "私たち "なのだ。)」というフレーズで締めくくった。

最近、常々僕たちが個と認識しているものは、実は全体の一部でしかないということを感じている。まさに"I"ではなく"We"だ。

また、Natureでも、カーボンニュートラルの実現を通じて「自然との共生をドライブする」という大きなミッションの実現を目指す中で自分達の非力さを日々痛感している。

だけど、カーボンニュートラルの実現は人類にとってのクリティカルミッションだ。

ぜひ、同じ志を持つ方々と共創することで、We(Natureの外の方々とも一緒にという意)として、この難題を乗り越えて行きたい。Natureでは、まだまだミッションを一緒に実現してくれるパートナー(企業)やNatureで一緒に働く仲間を募集している。

ご興味のある方はいつでもお気軽にDMでご連絡頂きたい!

https://twitter.com/haruumi524

(TGオクトパスとの取り組みやインターン採用のように、実際にTwitterのDMでご連絡いただいた方との出会いが素晴らしい形に発展しているケースもあり、ぜひお気軽に!)

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