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S.S『ついていきます』

この作品は、きつくはないですがホラーや怪談風ショート・ショートです。苦手な方はご注意下さいね。


何度も通っているトンネル
でも夜は初めて
口を開けてぼくを待ってるみたい
コツコツ、コツコツ
いやだな、足音が響くよ

コツコツ、コツコツ
ぱたぱた ひたひた

足を止めて耳を澄ます
何も聞こえない また歩く
コツコツぱたぱた、コツコツひたひた

足を早める 合いの手も早まる
「だ、大丈夫。何もいる訳ないし
♪お、おばけなんてう~そさ~」

ひたひたひたひた……

「こ、怖くない。
おばけも心霊現象もうそなんだ」

(ほんとにそう思う?)

「誰?」

(僕かい? 君の言葉を借りるなら、おばけ
遠い昔、ここで命を落とした
君は僕の声が聞こえるみたいだね
ふふふ、友達になれそうだ)

「友達だって? いやだよ
あれ、出口が見えない」

(君はもうここから出られない)

ただでさえ薄暗い照明が消えた
つまずいて転んだ
いや、つまずいたんじゃない

足をつかまれた!

(友達になってよ)

「離してくれたら考える!」

足が自由になったので立ち上がり
駆けだそうとして、また足をつかまれた

(うそつき)

「だって……おばけなんて怖いじゃないか」

(見た目で判断してはいけないよ。
僕、君が怖がることをしたかい?)

したよ! 十分したよ! でも……

「分かった。友達になる」

(嬉しいな。じゃあ、君もここで暮らそう)

「冗談じゃない!
ぼくにはぼくの家がある!」

(それもそうだ。ごめんよ
また来てくれるね? 約束してくれるだろ)

「あ、ああ」

出口が闇に浮かび、ぼくは必死に走った
二度とこんなところに来るものか

トンネルを抜けた瞬間
どすっ
誰かが背中に飛び乗った
恐る恐る振り向くと

血まみれの顏で男が笑っていた

(またウソついたね。

 だから僕……


 憑いていくよ)
                       〈了〉

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