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『きむら式 童話のつくり方』を読んで

ハウツー本が有益なジャンルもあると思いますし、否定はしません。でも童話なり小説なりを書くための本の効果に関しては、あまりないかと思います。読んだからといって書ける訳ないです。文章に関しては誰でも書いてきているはずだし、学ぶとすればそれは先人の作品と僕は思ってます。先人の作品を読んで学んだり、盗んだり(もちろん技術のことです)できなければ上達は望めないと思うのです。

ではなぜこの本を読んだかというと、行き詰まってるからです、はい。自分では自信もあったし、今もそんなに悪いかなぁと思う作品がまったく認められない。一次すら通れないのは理由があるはず。なのに似たり寄ったりな作品を書いてる。これではまた一次落ちの憂き目を見ることになる。書き方を学ぶというより、自分の創作のヒントになればと思い、読みました。

いつもならアマゾンのリンクをつけますが、この本はつけません。よくノウハウ教えますなんて、ちょっと入口を入ったぐらいの人が書いてるじゃないですか。この本の著者、木村裕一さんはかなりの出版実績を持った人ですが、同じ匂いがしました。僕は書くことをビジネスとは思ってないので、合わない部分が多かったです。

では役に立たないかというとそうではなく、メモも取ったし、著者が自作の制作過程に触れた話など興味深かったです。アイデアやキャラクターは見方次第で自分のすぐ傍にあるし、発想の膨らませ方も参考になりました。ただある程度の水準のものを量産するのに向いた方法論です。魅力はありますが、参考に留めておいた方がよいかもしれません。

この本を読了した後、安房直子さんの童話集『遠い野ばらの村』を読んだのですが、物語の持つ力を感じるのですよ。僕のような大人が、いい歳をして童話読んで、ううって心を打たれるのです。売れることも自己プロデュースも大事かもしれないけど、こんな話を書きたい! を大事にしなければ。ハウツー本頼っちゃいけない。長く読み継がれてる本から自分で学ぶしかないってことですね。

なるほどと思う所もありましたが、イラっとすることも多かった本書。あまり本筋には関係ない部分ですが、ミリオンセラー作家になる方法という章で、昔の漫画家は今なら新人賞を取れるか分からない。昔は漫画家が少なかった。今は皆絵も上手いし底辺が広い。みたいなことを書いてるのですが、見当違いも甚だしいです。昔だって娯楽は他にもありました。その中で漫画を選んで面白がって読んでいたのです。時代の中で求められるものを描く力量を持っていた人達ですから、今の時代に合った漫画を描くと思います。では逆に絵のスキルの高い今の人を漫画黎明期に連れていけば、漫画家になれるんですかね? 自分が生きている時代になれないなら、いつの時代もダメなんじゃないでしょうか。

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