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ショート・ショート

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ショート・ショートを集めました。ここの作品はどちらかといえば大人の方向けに、ちょっとブラックなものも含めて書こうと思っています。
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#連作

連作ショート・ショート『鼻たれ神』第四話(最終回)

「勇の思い出」 (世の中、変わったのう)  道行く誰を見ても余裕がなさそう。せわしなく足早に、周りの景色どころか人や車にも注意しているように見えない。  鼻たれ神は道端から起き上がった。倒れていても誰も気づきもしない。気づいても無視されることが多くなった。 (世知辛いのう)  仮にも神の名を持つ自分すら生きにくい世の中。鼻たれ神は寂しかった。  夕暮れの陽を浴びながらヨロヨロと歩き、公園で水を飲んだ。少しは空腹が紛れた。ベンチに腰を下ろして杖を立てかけた。 (人間にとって神

連作ショート・ショート『鼻たれ神』第三話

 「願い事は三人」 池の中から女神が現れた。 「お前の落としたのは、この神か?」 「違います。そんなに汚くなくて、長い鼻水がたれてます」 「では、この神か?」  女神は池の中から白い貫頭衣を着て、糸のような細い目をした小男を連れてきた。 「はい。それです」 「勇よ、神に向かってそれとは何ぢゃ」 「おだまりなさい。今はこの女神が話しているのですよ。勇とやら、あなたはとても正直な青年です。褒美に二柱とも神をやろう」 「えっ! 女神様、いりませんよ」  女神は勇の言葉を無視して池

連作ショート・ショート『鼻たれ神』第二話

「大きな願い事一つ」 「誰だよ、こんな時間に」  布団に入ろうとしていた勇は、眠そうな顔で玄関に向かった。 「誰ですか?」  アパートのドアの向こうから聞き覚えのある声がした。 「おお、前にもこんなやりとりがあったのう。懐かしい声ぢゃ」 「その声は!」  勇がドアを開けると、糸のような細い目をした、白い貫頭衣を纏って杖を手にしたあの神が、鼻水を垂らしてにこやかに立っていた。 「勇、久しぶりぢゃのう。元気にしてたか?」 「久しぶりも何も、一週間で人はそんなに変わらないよ」 「

連作ショート・ショート『鼻たれ神』第一話

「願い事三つ」  何か置いてあるのだと勇は思った。電柱の陰に白いゴミ袋が置いてあるのだと。傍を通り過ぎようとすると、その何かが動き出し、 「これこれ、そこの道行く若者よ」  勇は驚いて足を止め、じっと目を凝らした。街灯の明かりの下、さっきゴミ袋だと思った物は、白い貫頭衣を纏った人のようだ。背丈は勇の半分ぐらい。恐らく1メートルないだろう。手に背丈より長い杖を持ち、表情は糸のように細い目のせいか温和に見える。髪のない頭が街灯に照らされて後光が差しているようだ。しかし長く垂れた