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忘れてね

 君は忘れてしまったかも、僕を傷つけた、何気ない君の言葉。君は知らないだろう、失望し、涙した僕の心を。どちらが悪いなんてきっとなくて、僕も君も同じくらい悪かった。君が僕を傷つけたように、僕もたくさん君を傷つけた。知らず知らずのうちにだったり、傷つけるとわかってだったり。けれどそれは、同じ傷ではなかったから、分かり合えなかった。同じ痛みを背負って生きられたら良かったのに。そうすれば、もっと一緒にいられたかもしれないのに。
 君に素敵な言葉を何一つあげられなかったことを、今でも後悔している。でも君との時間を長く続けなかったことは、正しい選択だったと今でも思うよ。これ以上君を傷つけずにすんでよかった。僕のことなんて、はやく忘れるべきだ。身勝手な僕を捨てて、君が愛する人と手をつないで笑える日を心待ちにしている。僕が君の人生に触れたことすら忘れて、幸せになってくれ。ああ、でも、いつか僕が一人で息絶えるとき、君を思い出すことだけは許してほしい。呪ったりなんてしないから、恨んだりなんてしないから。最後まで、僕は僕のために、君の幸せを願うよ。

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