山アイロン部 in 尾瀬(2日目朝)
山小屋での目覚ましは心臓に悪い。マイ個室から弾ける狂乱のサンバ音。こいつを0.1秒でも早く止めないと周りの住人を起こしてしまう。スマートフォンを掠め取り指をスライディング。戻る静寂、午前4時。
我々は日の出を見ようと目論んでいた。2日目も雨を覚悟していたけれど、午前中は晴れる予報に変わっていた。まだ暗いうちから宿を出る。
霧の尾瀬の情緒たるや。
明るみに溶けゆく姿を漏らすまいと撮り続ける部員たち。山容に隠れて日の出は見ることができなかったけれど、それよりも我々はこのノスタルジックな情景に魅了されていた。
そのとき―
「ひぃっ・・・」副部長のひきつった悲鳴。
「ク、クマ・・・」
確かに前方にいる。人ではない何か。
それなりの大きさ、異形の体躯。
これはクマかもしれない。にじり寄ってみる。
短パン黒服のお兄さんが三脚を構えていた。
紛らわしいんじゃあ。
朝が来て、ついに念願の日差しが。
眩しい。帰路は最高の尾瀬ケ原を堪能できそうだ。